「脂がのって、ブリより上品」。平戸市生月町で、秋の味覚の新星が輝きを放っている。

知る人ぞ知る"幻の魚"、シイラの魅力

平戸市生月町。人口わずか4500人ほどの小さな島に、今、熱い視線が注がれている。その主役は「シイラ」。9月中旬から11月頃にかけて獲れる、まさに"旬"の魚だ。

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「生月と言ったらお魚なので、シイラもしかりですが、全部おいしいので是非食べていただければ」と、地元の飲食店「ひといき」の神田恭典店長は胸を張る。

平戸市内でトップの漁獲量を誇る舘浦漁港では、驚きの光景が広がっていた。「これで10キロ」。舘浦漁協の藤永雅之専長が持ち上げたシイラの大きさに圧倒される。

このサイズなら、刺身にして約40人分という。2024年のシイラ漁は特に豊漁だ。「ことしはですね、豊漁です、良かったです」と満足気な藤永専長。10月末時点で昨年の1.5倍、450トンを超える水揚げを記録している。

「とよひめシイラ」驚異の脂質11%

かつて「海のやっかいもの」と呼ばれたシイラ。しかし今、その評価は一変しつつある。

舘浦漁協では、メスのうち脂質が4%以上のものを「とよひめシイラ」としてブランド化。2024年は特に脂ののりが良く、なんと脂質11%を記録したものもあったという。「とよひめシイラ」は、通常の倍以上の価格で取引され、九州を中心に出荷されているという。

多彩な食べ方で魅力倍増

シイラの魅力は、その多彩な食べ方にもある。

地元流の食べ方は、刺身をみそで食べること。「シイラは水っぽい魚なんですが、味噌で食べることで特に塩味と甘さが引き立つ感じ」と、舘浦漁業組合の坂本浩一理事は説明する。シイラは鮮度が落ちやすいので刺身で食べられるのは生月ならではのこと。この時期は特にあぶらの甘みを感じられておいしいという。

さらに、東京のイタリアンシェフが考案した「シイラバーガー」や、地元イベントで優勝した「炙りシイラのマヒロール」など、創作料理も続々と生まれている。「炙りシイラのマヒロール」のレシピは11月中に舘浦漁協のインスタグラムで公開予定だ。「シイラはすごく骨も少なくて身もふっくらしていて大きくて食べやすいので、一度は手に取って食べてみてほしい」と坂本理事は話す。

かつては「海のやっかいもの」といわれていたシイラ。魚体が大きく定置網に入るとスペースが減って目的の魚がとれなくなったり食べる人が少なく、単価が安かったりしたためだ。しかし、おいしさを知る地元の人がブランド化を進めた結果、人気も知名度も上がってきている。

短い旬の間だけ姿を見せる、平戸の新たな味の宝石。その輝きは、確実に広がりを見せている。

こんな町メモ<平戸市生月町> 

漁業がさかんで人口約4500人で隠れキリシタンや捕鯨の島としても知られる。 「生月」という名前はかつて遣唐使船が海をわたって来た際にやっと「ひといき」つけると安堵した…という逸話が由来だといわれている。

(テレビ長崎)

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