母乳に含まれる抗体が子どもの脳に影響を与える仕組みを、群馬大大学院の定方哲史准教授(49)と長男で同大医学部3年の瑞樹さん(20)らの研究グループが解明した。抗体と結合した脳内の細胞が神経細胞の生存に関係するたんぱく質を分泌することを突き止めた。研究成果は国際科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロインフラメーション」に発表した。【庄司哲也】
これまでIgGと呼ばれる抗体が母乳から子どもの血液に移送され新生児の免疫力を高めることは分かっていたが、脳への影響は明らかになっていなかった。
定方准教授らのグループは、実験用の子どものマウスの脳内でIgGが免疫細胞ミクログリアと結合していることに着目。結合したミクログリアが、脳を構成する神経細胞のニューロンの生存に関係するたんぱく質の1型インターフェロンを分泌していることを解明した。
さらに母親からIgGを受け取るために必要なFcRnと呼ばれる受容体を欠失させたマウスを調べたところ、ミクログリアや特定のニューロンなど脳内細胞が減少していることも分かった。
ただ、人間では授乳期に母親が感染症にかかると、IgGが増えた母乳が、子どもの脳に悪影響を与えてしまう可能性があり、母乳から移送されるIgGの量がどのような影響を与えるかは不明という。
定方准教授は「IgGを受け取れないマウスの観察では、社会性行動に有意な変化が見られた。人の母親のIgGが子の脳に良い影響を与えるのか、悪い影響となるのかはさらに研究が必要で、今後明らかにしていきたい」と話している。
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