死者まで出した「紅麹事件」に端を発した騒動が広がっています(写真:清十郎/PIXTA)

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『食品の裏側』発売後、全国の読者から受けた「何を食べればいいのか?」という質問に対する答えとして、安部氏が自ら15年かけて開発した膨大なレシピノートの中から、「簡単に時短に作れるレシピ」を厳選したレシピ集だ。

いまなお食品添加物の現状や食生活の危機をメディア等で訴え続けている安部氏が小林製薬「の紅麹コレステヘルプ問題」について語る。
 

*この記事の続き:小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか?

「紅麹事件」で市場は大混乱

小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」。死者まで出したこの事件に端を発した騒動が広がっています。

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私のところにも「ベニコウジ色素を使った食品は大丈夫か?」という問い合わせが殺到しています。

赤い色をつける食品添加物の「ベニコウジ色素」は、今回の「紅麹コレステヘルプ」に使われている「紅麹」とは、完全な別物です。

それを一緒くたにされて、「ベニコウジ色素が使われた食品」までもが返品になっているのです。

ベニコウジ色素が使われる食品のひとつに「カニカマボコ」があります。

カニカマボコとベニコウジ色素は非常に相性がいいのです。

ベニコウジ色素はタンパク質に対して定着性がよく、あの色合いがまさにカニっぽくてベストマッチするのです。

そのカニカマボコまでもが「危険だ!」「回収しろ!」という風評被害を受けているのです。市場は混乱しています。

「紅麹」と一言にいうけれど、世の中にはサプリメントの「紅麹コレステヘルプ」と、伝統食品としての「紅麹菌」、さらに食品添加物の「ベニコウジ色素」があり、それぞれまったく別物です。

この3つがどう違うのか、見ていきましょう。

【1】 紅麹菌

まず「麹菌」とは何かということですが、麹菌はカビ菌の一種で、味噌、醤油、日本酒などの製造に不可欠なもので、和食の肝ともいえる存在です。

麹菌は広く中国、東南アジア、日本などで歴史的に発酵食品に利用されて来た伝統食品です。

そして、この麹菌の一種で、赤い色素を産生する菌が「紅麹」です。

紅麹菌にも種類がいろいろあるのですが、食品に使われるのは「Monascus purpureus(モナスカス プレプレウス)」「Monascus anka(モナスカス アンカ)」という菌です。

紅麹菌は、中国では1000年以上前から使われてきたとされ、長い歴史の中で日本や東南アジアに伝えられました。きれいな赤い色がつき、見た目の華やかさもあって珍重されてきました

日本では「紅酒」「紅甘酒」などに使われるほか、沖縄の伝統食品である「豆腐よう」も「紅麹」を使って作られる食品です。

麹については「平気で『減塩味噌』使う人が知らない超残念な真実」にも書いていますので、興味のある方はぜひご一読ください。

「公的な試験・安全審査」は経ていない

【2】紅麹コレステヘルプ(小林製薬)

文字通り、「紅麹」を使ったサプリメントです。

「Monascus pilosus(モナスカス ピロサス)」という「紅麹菌」を使い、米を使って培養(固体培養)し、それを高濃度にして錠剤にしたものです。

「紅麹サプリメント」そのものの歴史は、まだ数年にすぎません

また「紅麹コレステヘルプ」は食品扱い(機能性表示食品)ですから、公的な試験・安全審査は経ていません形は錠剤になっていても「食品」なのです。

もちろん小林製薬では独自の検査データを持っていたとは思いますが、それはまた別の話です。

ちなみに、サプリメントには、

★国の安全審査を要する「特定保健用食品(トクホ)」

★消費者庁の指定する栄養成分の機能だけを表示できる「栄養機能食品」

★届け出だけでいい「機能性表示食品」


 があります。

「紅麹コレステヘルプ」は、届け出だけでいい「機能性表示食品」でした。この件については、次の記事で述べたいと思います。

「3つを混同している人」があまりに多い

【3】ベニコウジ色素

「ベニコウジ色素」は、食品に赤い色をつける食品添加物です。「モナスカス色素」とも表示されます。

「Monascus purpureus(モナスカス プレプレウス)」という「紅麹菌」を使い、「液体培養法」という方法を用いて培養し、色素のみを取り出します。液体培養法は不純物を管理しやすい方法です。

添加物としての歴史は十数年あります。

先に挙げた「カニカマボコ」のほか、「カマボコ」「練り製品」「お菓子」などに幅広く使われています。

「紅麹を使っているのだから、結局3つとも同じものではないか」と思われるかもしれませんが、この3つには「決定的な違い」があります。

それは"公的試験"を経ているかどうか」ということです。

決定的な違いは「"公的試験"を経ているかどうか」

食品添加物であるからには、厚労省の管轄する「食品添加物公定書(最新第10版)」で規格が定められています

動物による反復投与の毒性試験、発ガン性試験、突然変異試験、遺伝毒性などの「安全試験」をクリアしなければ添加物として認められません。

つまり、添加物である「ベニコウジ色素」は「公的な安全審査を通過したもの」であるということです。

それに対して、食品である「紅麹菌」「紅麹コレステヘルプ」は「公的な安全審査」を経ていません

とはいえ、「紅麹菌」は1000年以上という長い歴史の中で伝統的・経験則的に安全性が担保されています。

「その食品を長く食べてきた」という「歴史の証明」があるわけです。その違いです。

「食品だから安全」でも「添加物だから危険」でもない

「お前は『食品の裏側』の著者のくせに、食品添加物を擁護するのか」というお叱りの声が上がるかもしれません。

私がここで言っているのは「いい」「悪い」の感情論ではなく、「『食品添加物』は公的な安全性のデータがあり、『食品』にはそれがない」という、その事実です。

「ベニコウジ色素」の安全性は、一応は担保されています。厚生労働省に食品添加物として認可されてからこの十数年間で、問題が起こったという話は聞きません。

「食品だから安全」というわけではないし、逆に「添加物だから危険」ということでもないのです。

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当たり前のことですが、口に入れるものは安全性の高いものであることが絶対条件です。

「安全性の担保」は簡単なことではありません

そして、これも当たり前のことですが、膨大な検査の証明、長い歴史の証明が必要です。「自主基準」「わずか数年」で獲得できるとは、私にはとても思えません

そこには「制度の瑕疵」、さらには「安全性の軽視」があったのではないでしょうか。

そのあたりに、この事件の根っこがあるような気がしてならないのです。

次回は「麹菌の管理」というアプローチから、この問題を考えていきたいと思います。

*この記事の続き:小林製薬「紅麹問題」結局、何がマズかったのか?

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