29日の臨時国会。少数与党として初めて臨む、石破総理大臣の所信表明演説は早速、他党への配慮をにじませるなど様変わりしたものとなりました。
■少数与党で“薄氷”他党に配慮も
この記事の写真 石破茂総理大臣「先般の選挙で示された国民の皆様方の声を踏まえ、他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、真摯にそして謙虚に、国民の皆様方の安心と安全を守るべく取り組んでいく」
演説の序盤から、野党に協力を求めた石破総理。少数与党として“薄氷を踏む”国会が始まりました。
石破茂総理大臣「党派を超えて議論し」
「建設的な議論を行い」
約32分の演説の中に“議論”という言葉が登場すること11回。丁寧な姿勢を強調します。さらに、演説を通じてにじんだのは、国民民主党への配慮です。
石破茂総理大臣「“103万円の壁”については、令和7年度税制改正で議論し、引き上げる。いわゆる暫定税率の廃止を含む“ガソリン減税”については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」
103万円の壁の引き上げとガソリン減税、国民民主党の2大看板政策を盛り込みました。
一方で、石破カラーの政策では、地方創生のための交付金の倍増や防災庁の設置を掲げましたが…。
石破茂総理大臣「令和8年度中の防災庁の設置に向け、着実に準備を進めていく」
まばらな拍手が、少数与党の悲哀を物語ります。
臨時国会の最大の焦点である“政治改革”については触れたのは演説の終盤。割いた時間は1分半ほどです。
石破茂総理大臣「具体的な使途が公開されていない政策活動費の廃止。政治資金に関する必要な監査を行う第三者機関の設置。収支報告書の内容を誰でも簡単に確認できるデータベースの構築など、政治資金に関する諸課題の改革のための議論を進める」
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■石橋湛山の言葉に込めた思い多くの野党が求める企業・団体献金の禁止には触れませんでした。そして、演説の結びで引用したのは、1957年の石橋湛山内閣の施政方針演説での言葉です。
石破茂総理大臣「常に国家の永遠の運命に思いをいたし、国民全体の福祉をのみ念じて、国政の方向を定め、論議を尽くしていくように努めたい」
石橋湛山氏は病により、わずか65日の在任期間で退いた“短命政権”ながら、その功績が高く評価されています。石破総理は、強い思い入れがあり、演説にも盛り込まれたということですが、野党からは…。
立憲民主党 野田佳彦代表「石橋湛山は戦前、戦中、戦後とブレない一貫した姿勢で、短命政権だったが高い評価を得ている総理。貫くものが石破内閣にあるのか。石橋と石破じゃえらい差だと思う」
石破総理が引き上げこそ明言したものの、上げ幅をめぐる協議が続いている“103万円の壁”については…。
自民党 森山裕幹事長「引き上げるとは言われたが(国民民主の求める)178万円に引き上げるという発言ではなかった」 国民民主党 玉木雄一郎代表
「明言をされたことは、第一歩が記されたということで評価をしたい。どこまで引き上げるかはこれからで、まさに第一歩に過ぎない」
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■丁寧に合意形成…“異例”の演説■丁寧に合意形成…“異例”の演説
衆議院で少数与党となる中、国会審議はどう進むのでしょうか。政治部官邸キャップの千々岩森生記者に聞きます。
(Q.石破総理は所信表明演説で「真摯に」「謙虚に」という言葉を何度も用いたり「他党に丁寧に意見を聞き、幅広い合意形成を図る」と語っていました。石破総理の演説から、どんな印象を持ちましたか)
千々岩森生記者「永田町ではよく“上から目線”というフレーズが飛び交いますが、29日の石破総理は異例の“下から目線”という印象でした。所信表明演説は普通、『私の内閣はこれをやります』とぶち上げますが、石破総理は冒頭から『野党の意見も聞きます』と宣言。実際、野党の政策である“103万円の壁の引き上げ”を明言しました。現場で聞いていて興味深かったのは、今回野党の議席が増え、議場の半分以上が野党だったにもかかわらず、ヤジはいつもより少なかったです。石破さんはもともと“官邸一強”はよくない、“もっと野党の意見を聞くべき”というスタンスの政治家でした。自身が総理になった今、結果的に野党と協力して合意形成せざるを得ない状況になっています」
今回の臨時国会の焦点となっているのが、今年度の補正予算案です。国民民主党が求める“103万円の壁”。引き上げ幅はこれからですが、与党側は譲歩する代わりに自民・公明・国民で連携して、最優先の補正予算案・成立を目指す構えとなっています。
もう一つの焦点が、政治資金規正法の再改正です。立憲民主党をはじめとする野党が主張する“企業・団体献金の禁止”。これについて自民党は慎重姿勢で、石破総理も所信表明で触れませんでした。
(Q.臨時国会は1カ月足らず。野党協力が必要とされるなかで、石破総理は乗り切っていけるのでしょうか)
千々岩森生記者「始まったばかりですが、すでに会期は延長が不可避です。臨時国会は通常、10月〜12月前半の2カ月ぐらいですが、今回は総選挙があったため、そもそも短い。にもかかわらず、少数与党なので丁寧に時間をかけないといけない。会期の大部分が補正予算案の審議に割かれることになりそうです。もう1つのテーマの“政治とカネ”については、与野党が合意できる『政策活動費の廃止』などは、この国会で決着をつけ、残る『企業・団体献金』は切り分けて、来年に持ち越しとなりそうです。そうなると、来年夏の参院選まで政治とカネの話が続くことになりかねないとみています」 この記事の写真を見る
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