能登半島地震から4カ月経ち、復興に向けた議論が進むなか、能登の女性たちからは「子どもや障害者などの多様な声が届かないのでは」と懸念する声があがっている。

 被災した地域の各自治体における女性議員の割合や、自治会長に占める女性の割合、防災会議に占める女性の割合などは軒並み低い。「意思決定の場」に女性が少ないことが課題として、5月初旬、地震後に結成された女性ネットワーク「フラはなの会」や公益財団法人「ほくりくみらい基金」など4団体は、石川県の馳浩知事に調査書と提言を提出した。

 調査書によると、震災前から地域で就業や活動をしている女性にヒアリングしたところ、炊き出しなどの労働は主に女性が、長時間にわたり無償で担われていたことが浮き彫りになった。避難所の運営において、女性や多様な人々のニーズが十分に把握されていなかったことや、家族・親族のケアのために出勤できず失職した女性がいたこともわかった。

 調査書では、背景として住民組織の長に女性が圧倒的に少なく、平常時から女性が発言しにくい状況があったと指摘。介護や育児、家事といった無償で行われるケア労働が女性に偏り、それを「当たり前」とする平常時からのジェンダーバイアスがあったことも問題としている。

 女性たちからは「区長も副区長もほぼ全員が男性。(女性は)でしゃばったことするなという雰囲気がある」「男性ばかりの区長会や地縁団体が代表の声となってしまい、少数派の声は通らない。本当の意味での(住民の声を聞く)戦術がないなかで、多様な声が届かないことを強く懸念する」といった意見が出た。

 提言では、「復興プロセスにかかわる住民は男女同数とすること」「復興計画策定と施策の効果の確認は、男女別データのエビデンスに基づき行われること」「女性たちが参画しやすく、イノベーティブな発想で復興の取り組みを創出するための中間支援組織を設立すること」など10項目が示された。

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 調査書で紹介されている、男女別データは以下の通り(一部抜粋)。

女性議員の割合(24年各自治体HPの公開情報より、全国平均は18・1%)

七尾市22・2%、輪島市6.7%、珠洲市0%、志賀町8・3%、中能登町27・3%、穴水町10%、能登町7・7%

自治会長に占める女性の割合(22年度内閣府調査より、全国平均は7・4%)

七尾市0・4%、輪島市6・9%、珠洲市0・6%、志賀町1・5%、中能登町0%、穴水町3・8%、能登町3・1%

防災会議に占める女性の割合(22年度内閣府調査より、全国平均は12.6%)

七尾市11・1%、輪島市0%、珠洲市2・6%、志賀町4・8%、中能登町18・8%、穴水町15・4%、能登町7・7%(大坪実佳子)

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