「伝統的酒造り」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。日本酒に焼酎に泡盛。酒の種類は知っていても、それを生み出す伝統的酒造りとは、さて、どんなことでしょうか。
- 「伝統的酒造り」ユネスコ無形文化遺産に登録 こうじを使った技術
Q 「伝統的酒造り」とは?
A 杜氏(とうじ)や蔵人ら酒造りに関わる職人が築き上げてきた、こうじ菌を使う酒造りの技術を指す。基本的に手作業で、現在では大量に生産しているところもあるが、根底には伝統的な酒造りの技術がある。
Q 登録されたのは酒自体ではないということ?
A 酒造りの知識と技術が対象だ。技術は500年以上前の室町時代に原型が成立した。日本各地の気候風土に合わせて発展し、日本酒や焼酎、泡盛、みりんなどの製造を通して受け継がれてきた。2021年に国の登録無形文化財になっている。
Q どこがポイント?
A 大きく分けて、①原料の米や麦を蒸す②蒸した米や麦にこうじ菌を生やしてこうじを作る③もろみの発酵という三つの工程がある。
もろみは米などの主原料とこうじ、酒母(増殖させた酵母)、水を合わせたもの。造る酒によって若干の違いがある。発酵過程では、こうじ菌の働きで原料のでんぷんを糖に変える過程と、糖から酵母がアルコールを生成する過程が同時並行で進むので、並行複発酵と呼ばれる。
ワインは単発酵という形式で、糖分が含まれるブドウなどの果汁を酵母で発酵する。ビールは複発酵といい、麦芽に含まれる酵素が麦のでんぷんを糖分に変えて、その糖分に酵母を入れて発酵が進む。
Q 登録には、日本社会における酒の意味合いも関係している?
A 古くから、酒は神々からの聖なる贈り物とされてきた。酒が日本の祭りや結婚式など社会的な節目の場に欠かせないものであるという、社会的文化的要素も考慮されている。
Q ユネスコの無形文化遺産とは?
A 祭りや芸能、伝統工芸技術、社会的慣習など、人から人へと伝えられて形のない「生きた文化」を保護していこうと2006年に始まった。世界全体では600件以上が登録されている。日本からは、伝統的酒造りが23件目。他に能楽や人形浄瑠璃文楽、和紙、山・鉾(ほこ)・屋台行事などがあり、食の関係では和食が13年に登録されている。
Q 同じユネスコの世界遺産との違いは。
A 世界遺産は遺跡や自然などが対象で、普遍的価値のある人類共通の宝を守ることを目的とする。一方、無形文化遺産は文化の多様性を示すのも大きな目的で、世界的な価値があるから登録されるわけではない。
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