衆院3補欠選挙の自民全敗を受け、6月の衆院解散は遠のいたとの観測が広がった。当初、6月23日の国会会期末に合わせ、衆院解散も取りざたされていた。政府高官は、「6月解散はないと思う。(9月の)総裁選の直後では」との見方を示した。岸田総理は4月30日、解散時期について記者団に問われ、「解散総選挙についてはまったく考えてない」と否定した。自民党は、唯一の与野党対決の構図となった保守王国・島根1区で完敗し、危機感が渦巻いた。朝日新聞が実施した出口調査によると、投票の際、自民の裏金問題をどの程度重視したかとの質問に「重視した」は77%、「重視しなかった」は19%だった。「重視した」と回答した人の65%が立憲民主党の亀井亜紀子氏に投票、一方、「重視しなかった」と回答した19%の人も、42%が亀井氏に投票していたことがわかった。今回の出口調査から、自民と立憲民主による一騎打ちとなった注目区で、裏金問題が有権者の投票行動に影響を与えていたことが裏付けられた。

自民党の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、東京地検特捜部は2日、収支報告書に虚偽記載したとして、刑事告発されていた萩生田光一前政調会長と、既に離党した世耕弘成前参院幹事長ら8人を不起訴にした。政治資金規正法改正の与党案を巡り、自民党は、現在20万円超となっているパーティー券購入者の公開基準を引き下げる方向で調整に入ったと報じられている。自民党案では、連座制について、会計責任者が収支報告書を作成し、議員本人は、その内容に関する確認書を提出することを義務付けることを明記した。仮に、会計責任者が処罰を受ければ、確認不十分の議員も公民権停止の対象となる。公明党は連座制導入に賛成の立場を従来から表明していた。公明党の山口代表は、「いま政治に問われていることは、補選の結果も受けて、政治に対する信頼を回復することが重要だ」と強調した。

菅前政権時に行われた2021年4月には、参院広島再選挙、参院長野補選、また、衆院北海道2区補選の3選挙不戦敗を含め全敗した。同年6月の静岡県知事選挙で、自民推薦の候補が敗北した。同年7月に実施された東京都議会議員選挙では、自・公目標の過半数に届かなかった。また、菅氏は同年8月、お膝元の横浜市長選でも、支援した元国家公安委員長を務めた小此木八郎氏が敗退した。菅氏は、衆院解散に踏み切らず、同年9月の総裁選にも立候補を見送った。一方、岸田総理は、不適切発言を機に、川勝平太知事が突然辞意を表明したことを受けて、5月26日に静岡県知事選挙を迎えることになる。裏金問題で離党勧告の処分を受けた塩谷立元文科大臣、女性問題で議員辞職した宮沢博行前防衛副大臣は、静岡県が選挙区であることから、岸田政権にとって予断を許さない状況だ。7月7日には、国政にも影響が及ぶ可能性がある東京都知事選挙が実施される。そして、9月30日には、自身の総裁任期満了を受けて、党総裁選挙が行われる。今後の党勢を占う上で、注目を集める重要な選挙が、岸田総理を待ち受けている。

★ゲスト:久江雅彦(共同通信社編集委員兼論説委員)、中北浩爾(中央大学教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)

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