箱根神社を訪れる観光客ら=2024年4月17日、本橋由紀撮影

 ゴールデンウイーク(GW)で多くの観光客が神奈川県内を訪れている。人気の観光先の一つ、箱根町では新たな観光財源の確保を巡って議論が進んでいる。人口約1万人の町には例年約2000万人が訪れ、人口規模を上回るごみや下水道処理、救急出動などの経費がかさむためだ。客足は新型コロナウイルスの影響で一時遠のいたが回復傾向にあり、県内初の宿泊税導入や入湯税引き上げなどについて意見が交わされている。【蓬田正志】

 町によると、観光施設の整備や運営に加え、ごみや下水道処理、救急出動など一部でも観光客が関わるサービス経費は多額だ。コロナ禍前の2019年度で入湯税の収入をあてても23・6億円が必要だった。

 一方、町の懐事情は厳しい。町税収入は長期の景気低迷に伴い、1996年度の78・4億円をピークに下がり続けている。15年度には59・7億円まで落ち込んだ。

 このため、16年度から土地や家屋の所有者にかかる固定資産税の税率を0・18%引き上げた。それでも人口減少などで将来的に財源不足が深刻になるという。

 そこで目を付けたのが新たな観光財源だ。19年度に有識者ら9人による検討会議を設置。コロナ禍で一時議論が中断したが、23年10月に議論を再開した。

 俎上(そじょう)に載った一つが入湯税の引き上げだ。町は温泉入浴に対し、宿泊に150円、日帰りに50円を課税。税収、入湯客ともに1987年度以降、日本一をキープしており、19年度は約6億2000万円の収入があった。引き上げれば税収増も期待できるが、「目的税」のため使い道は観光振興や消防施設の整備などに限られるというデメリットがある。

 もう一つ議論となったのが宿泊税の新設だ。東京都や大阪府など9自治体で導入され、京都市では宿泊代金に応じて200~1000円を設定。総務相の同意があれば条例で自由に使い方を決められる。一方、観光客の7割以上を占める日帰り客からは徴収できないというジレンマがある。

 これまでの検討会では、山梨県と静岡県が実施してる富士山の入山料「富士山保全協力金」などについても意見が交わされた。1人1000円で、環境配慮型トイレの整備などに充てられているが、任意という課題がある。

 議論の方向性は見えておらず、検討会は26年9月までに報告をまとめる。町側は「最も望ましい負担のあり方を模索したい」と見守っている。

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