3月、ついに日銀はマイナス金利政策を解除し、金利の引き上げを決めた。およそ17年ぶりの利上げとなり、長らく続いてきた超低金利の時代も転換点を迎えることになる。
市場や家計へのさまざまな変化が取り沙汰されている中、最も注目を集めているのが住宅ローン金利への影響だろう。長期金利の影響を受ける固定金利に関しては、すでに上昇傾向にある。
一方で多くの人が利用する変動金利は、「短期プライムレート(短プラ)」を基準として各金融機関が設定する。この短プラは2009年より据え置かれており、その性質上、すぐに大幅な利上げが起こるとは考えにくい。
つまり現状は、変動金利のままでも大きな影響を受ける可能性は少ないと言える。
ただし、金利は今後も変化し続ける。政策金利の利上げが続けば、不動産価格に影響を及ぼす可能性も否定できない。
金利上昇で支払総額が増えれば、借り入れできる限度額も下がることになる。結果的に“買い控えマインド”が強くなり、不動産価格の下落につながっていくからだ。
一方で、一部の「億ション」などキャッシュで購入される高価格帯の物件はこういった影響を受けにくい。
つまり「都心・駅近・駅前・タワー・大規模のように条件のいい高額帯の不動産」と、「なだらかに価値の下落を続ける大半の不動産」、そして「限りなく無価値、あるいはマイナスの不動産」が「三極化」し、格差が一層際立つ形になる。
しかし、金利上昇による購買意欲の低下や不動産価格が下落するというのは、あくまで大局的な市場の見方でもある。実際の売買にあたっての判断基準となるのは「そのマンションが持つ現状の資産価値」であることも事実だ。
今回は金利が上昇しても「選ばれるマンション」「価値あるマンション」として輝き続ける条件について考えてみたい。
資産価値向上の鍵を握る4つの要素とは?
不動産のプロがマンションの価格を決める際、類似した成約事例から逆算して価格を算出する「取引事例比較法」を用いることがほとんどだ。
だが取引事例比較法に基づいて提示される価格は不透明なことが多く、実際にマンションの資産性を見ていくうえで重要な4つの要素がある。
具体的には
1.立地2.建物仕様
3.管理状況
4.価格妥当性
の4要素だ。
マンションの資産価値を高めるうえで、この4つを磨き上げることが大切になってくる。
要素1.立地生活の利便性に大きく関わる要素で、駅からのアクセスをはじめ、最寄り駅がターミナル駅かどうかなど、“いわずもがな”の部分と言える。
また「近隣エリアが再開発の予定地」などの要素も資産価値に影響する。
さらに立地では、ハザードリスクも関係する。リスクそのものよりも、マンションとして「どのようなリスク対策がなされているか」に重きが置かれる。
対策例としては防災用倉庫の有無、水害時の止水板設置の有無、電気設備等への浸水対策などが挙げられるだろう。
駅からのアクセスなどわかりやすい価値だけでなく、リスク対応を含めたハザードリスクなどの複合的な観点から「立地」を見ることが大切だ。
共用施設の“コスパ”もチェック
要素2.建物仕様マンションの建物仕様は、専有部分と共用部分に区分される。
専有部分は居住スペースで水回り設備のグレードや、間取りの使い勝手など生活利便性の高さが基準となる。わかりやすい要素なので、マンションを選ぶ時に重視する方も多いだろう。
一方、見えない部分の要素も資産価値に影響してくる。
たとえば床や天井の構造はどうなっているのか(二重床、二重天井)、コンクリートの強度はどうなっているのかなどの部分だ。
同じ価格帯なら、遮音性やメンテナンス性が高い二重床、二重天井を有するマンションが選ばれるのは当然だ。目に見える設備は後々リフォームで改善できるが、内部の仕様は簡単に変えることが難しいことにも留意しておきたい。
また共用部に関しては、豪華なゲストルーム、コンシェルジュサービスなどを備えるマンションも少なくない。
確かに多彩な施設を有するマンションは魅力的だ。ただし付加されるサービス、施設が多ければ当然管理費も高額になる。
またコストパフォーマンスに見合っているかどうかも関係する。
たとえばキッズルームにしても、多くの住人が利用するのであれば「価値ある施設」だと言えよう。しかしある程度の築年数を経たマンションの場合、利用する子どもがいなくなったまま放置されているケースも少なくない。
それでもメンテナンスが必要となり、コストもかかる。まずは資産性の観点から、自分たちにとって真に必要な共用施設が付いているかどうかを検討しなければならない。
マンション購入の際は、共用施設の状況確認をおすすめしたい。
要素3.管理状況選ばれるマンションになる4つのうち、一番の鍵を握るのが「管理状況」になる。先に挙げた2要素(立地、建物仕様)は、よほどの事情がない限り変えるのは困難だ。
しかし管理に関しては、自らが組合員として管理組合の運営に積極的に関われば変えられる要素だからだ。
管理状況を把握するため、次のような点を確認しておきたい。基本的には、居住性を高める取り組みがなされているかどうかが判断基準となる。
今後の維持修繕の計画が適正に組まれているか 管理規約などのルールが実態に沿っているか
要素2でふれた余剰な共用施設の有無、適切なコンバージョン(現状に沿った施設への転換)が行われているか
適切に管理されているマンションは、居住性の高さにもつながる。現住人にとって居住性の高いマンションは、購入側から見ても魅力的であり、資産性にも影響してくることになる。
要素4.価格妥当性最後の要素である価格の妥当性は、マンション全体の話とは少しかけ離れ、「売りたい」場合の価格設定の話になる。
たとえば、同一グレードの、ほかのマンションの住戸が安く売り出されている時期は売り時ではない。
「売り時を見極める」ためにも、ミクロな視点で売買価格を把握し、近隣エリアを含めた動向をこまめにウォッチし続けることが大切だ。
また、先にも述べたとおり、マンションの価格を決める際には、取引事例比較法を利用する。
そのため前述の3要素に対する取り組みについては、マンション内でしっかりと情報共有し、各組合員が売り出し時のアピール要素にして売却時の価格設定を上げることで全体の資産性向上につなげていくことも重要だ。
住民が「広報」として魅力を伝える活動を
マンションの資産性を向上させるためには、上記4要素に磨きをかけることが大前提となる。
けれども購入を検討している時に、これら4要素がどうなっているのかを知る術はそう多くはないのが実情だ。管理組合としてしっかり活動していたとしても、明確な形で資産性に反映されるわけでもない。
そこで住人自らがマンションの「広報」となり、4要素をポイントとしたマンションの取り組みやスタンスを伝えることをおすすめしたい。
実際、2022年には、マンションの管理状況を認定・評価する「マンション管理適正評価制度」や「管理計画認定制度」の2つの制度が始まっている。
一定の基準を満たしたマンションの資産性向上を図る目的でスタートした2つの制度は、マンションの管理状況を「見える化」する仕組みとなっている。
ただ、この2つの制度だけでは4要素について反映されているとは言いがたい。マンション独自の取り組みをよりわかりやすくアピールするためには、自ら「広報」する工夫が必要だ。
最もシンプルな方法が「管理に係る重要事項調査報告書」に、自らの取り組みを入れる項目を設けるやり方だ。マンション売買の際に発行されるもので、管理会社に記載を依頼すれば、アピール項目として記載できる場合もある。
管理組合によっては、独自で発行しているマンションもあるほどだ。ほかにも、マンション独自のホームページを作成し、運用していく方法もある。
自分たちで資産価値をアップさせる意識を
今後、自分たちのマンションの資産価値をアップするためには、4要素を加味した魅力を磨くこと。さらにマンション管理組合運営には、魅力を対外的に訴える「広報力」が求められていくだろう。
まずは、取り組めるところからスタートし、マンション全体を広報するスキルを高めていってほしい。
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