学びたいという思いに応える夜間学級が大阪府泉佐野市立佐野中学校に開設され、8日、入学式があった。新入生41人のうち36人が外国籍で、市対岸部にある関西国際空港の関連事業所で働く外国人も多く入学した。生徒たちは「日本語を上手に話せるように」「日本の皆さんとの絆を深める」「昼は働き、夜は習う充実した生活を送る」などそれぞれの目標を胸に学び始めた。
式の終盤、会場の体育館の大型スクリーンに生徒1人ずつの写真が映し出された。写真の横には「日本語と日本の文化や歴史を勉強し、日本語検定に合格したい」「仕事の時に日本語で対応できるように」「漢字を読み書きし、フィリピンと日本語に架け橋になる」「楽しく生き生きと学ぶ」など、名前とそれぞれの抱負を書いた自己紹介の一文が添えられた。
夜間学級は4月に開設され、オリエンテーションなどを経て入学式を迎えた。生徒は16~76歳で、国籍別では日本5人▽フィリピン10人▽ネパール9人▽中国、インド各7人▽ベトナム、パキスタン、ドイツ各1人。民族衣装を着て式に臨む生徒もいた。
式で、浜崎健太校長は「学校には楽しいことがたくさんある。周りの全ての人はあなたを応援してくれる」と式辞を述べた。在校生代表で生徒会長の兎田谷(うさいだや)奈々さん(3年)が「私たちの中学校に夜間学級が開設され、とても誇らしい。同じ学びやで楽しく充実した学校生活を送り、多くの思い出をつくりましょう」と歓迎のあいさつをした。新入生の板谷時美さん(76)が「学びたいという思いを持って集まった仲間は家族と同じです。それぞれの目標に向かって仲間と支え合いながら一歩ずつ前進していく」と誓いの言葉を述べた。
教室に戻ると、教員がペットボトルに入ったミックスジュースを持ち、生徒たちに「どんな果物が入っていますか」と問いかけた。すぐに「バナナ」「ミカン」「リンゴ」「桃」「パイナップル」と答えがそろった。教員は「ジュースは5種類がちょうどよいバランスで混ざっている。今、育った環境や考え方、入学目的が違う生徒41人が集まった。多種多様な41人の個性が失われずに、違いを認めて尊重し、とてもおいしい『佐野夜間学級ジュース』をみんなでつくりたい」と呼びかけ、全員がミックスジュースで乾杯した。
新入生で中国生まれの袁建平さん(41)は取材に対し、「友達をたくさんつくりたい。日本の文化が好きで俳句を学びたい。日本語をペラペラに話せる通訳を目指す」と抱負を話した。
諸般の事情でほとんど学校に通えなかったり、外国籍で母国で十分な教育を受けられなかったりした人を対象に生徒を募集していた。授業は1日4時間で、始業は午後5時半、終業は同8時40分。修業年限は3年で、原則6年まで在籍できる。府内には夜間学級が同校を含め8市に11校ある。【中村宰和】
新入生代表、板谷時美さんの誓いの言葉(要約)
生きていくために16歳からずっと革職人として働いてきた。漢字が書けなくても読めたので生活に困ったことはない。それでも文字を書かないといけない場面がある。読めるのに書けないのは本当に悔しい。何年も悔しい思いを胸に押し込んできた。
夜間学級に通うようになり、勉強が楽しい。わからないことがあってもあきらめなくていい場所はとても居心地がいい。先生たちはわかるまで一生懸命教えてくれる。
夜間学級の仲間には文字や会話で苦労している人たちがいる。言葉の壁があっても心の壁はない。隣で一生懸命勉強している仲間がいると、「自分も頑張ろう」という気持ちがわいてくる。みんなと一緒ならできる、そんな仲間になりたい。
学びが世界を変える。学ぶことで人生はもっと良くなる。やり直すチャンスはいつでもある。私たちは夜間学級の可能性を信じて頑張ります。
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