Q ローストビーフをちょうどいい火入れ加減で作りたいのですが、オーブンがないと難しいでしょうか。 A フライパンと鍋でOK  食卓を華やかに彩ってくれるローストビーフ。織田調理師専門学校(東京都中野区)の今井靖人校長(48)は「専門店でもオーブンを使わずに提供している所もあります。家庭でも、フライパンと鍋で作れますよ」と話します。  肉は加熱が進むとタンパク質が凝固し、うまみを含んだ肉汁も流出していきます。高すぎない温度でじっくり熱を加える低温調理が、ロゼ(薄ピンク)色の、ちょうどいい焼き加減でしっとりと作るこつです。  一方、厚生労働省は肉による食中毒防止のため、「中心部を75度で1分以上」という加熱条件を示し、70度なら3分、65度なら15分が必要としています。「低温調理とはいえ、余熱だけに頼らず、中までちゃんと火を通すことを意識してください」と今井さん。

こんがり焼き色がつくまで肉を倒しながら各面を焼く

 もも肉は、整った直方体や円筒形で、高さ4センチ前後のブロックがむらなく熱が通りやすいそうです。調理の30分前に冷蔵庫から出し、常温に近づけておきます。塩、こしょう、おろしニンニクをまぶし、食品ラップで包み、さらに30分置いた後、フライパンにサラダ油や牛脂を入れ、肉の各面全てを中火で計6分ほど焼きます。「表面を焼き固めることで肉汁が出にくくなります」(今井さん)

鍋で3分ゆで、80度の湯に25分ほどつけて熱を通す=いずれも東京都中野区の織田調理師専門学校で

 この時点でこんがりと焼き色がついておいしそうですが、「内部はまだまだ生」。ラップで二重に包んで耐熱性のあるジッパー付きの袋に入れ、ボウルの水に沈めて水圧で中の空気を抜いた後、鍋に沸かした湯で約3分ゆでます。高温の鍋底に袋が直接触れないよう、湯の量は肉全体が浸って少し浮くくらいにします。  火を止め、温度計で測りながら加水して80度まで湯温を下げたら、ふたをして25分ほど放置。「『蒸らし煮』状態でゆっくり熱を通すことで、パサつかず、内部の肉汁も保てます」。鍋から出し、袋とラップを外したらアルミホイルで包み、常温で冷まします。熱いまま切ると、肉汁があふれ出てしまうからです。数時間後、真ん中辺りに縦に包丁を入れてみて、断面に赤みが目立つようなら鍋で再度ゆでます。もも肉は歯応えがあるので薄切りに。ベビーリーフやミニトマトなども皿に盛り付けます。

完成したローストビーフ。わさびも添えて和風に

 今回はしょうゆなどを煮立てたソースで、わさびも添えて和風に=材料例。肉を焼く際にローズマリーやタイムなどの香草を入れ、ソースは酒の代わりに赤ワインを入れると洋風に仕上がります。「和洋中のジャンルを問わないごちそうですが、家で安価に作れて、意外と作業の手間も少ないんです。お好きなソースや付け合わせと一緒に楽しんで」と今井さん。残った分は3日間は冷蔵保存でき、冷製でも楽しめます。 (神谷慶) 【材料例】(和風、4人分) 牛もも肉(ブロック) 500g
塩 4g(肉の重量の0.8%)
こしょう 少々
おろしニンニク 1片分 ※以下、ソース用
濃い口しょうゆ、みりん、酒 各大さじ2 
砂糖 小さじ4
おろしタマネギ 1/4個分

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