JR東海が計画するリニア中央新幹線のトンネル工事で出る残土置き場をめぐり、町の審議会から賛否両論を併記した答申を受けていた岐阜県御嵩町。渡辺幸伸町長が10日、会見を開き、汚染がない残土を条件付きで受け入れる方向でJR東海との協議に臨む方針を示した。理由については「全否定した状態では協議に入れない」と説明した。

 町内に計画されている残土置き場は、JR東海がほぼ取得済みの候補地と、町有地の候補地の2カ所にまたがっており、双方に湿地が含まれている。ここには、希少植物のハナノキ、シデコブシなどが分布している。

 この日、町が示したJR東海との協議方針では、残土のうち、汚染がない「健全土」のみを受け入れ、重金属などを含む「要対策土」は搬入を認めないことを盛り込んだ。渡辺町長は理由について、「要対策土は地元住民の不安もあり、町民の納得が得られないと判断した」と述べた。

 協議方針ではまた、湿地に希少植物が生息していることなどから、「希少種の保全で改善できる点を積み重ね、一定程度保全が確保されること」が、残土の受け入れの前提条件とした。

 渡辺町長は「環境保全として、JR東海と一緒に何かできる可能性がある」と期待を寄せた。

 JR東海の計画によると、御嵩町は90万立方メートルの残土を受け入れ、そのうち、要対策土が22万立方メートル、健全土が68万立方メートルという。

 残土の受け入れをめぐっては、町が設置した地元住民や学識経験者らでつくる審議会が是非を協議。今年2月の答申で、要対策土については「専門処理施設等による処理を求めることが適当」とし、健全土の受け入れについて「やむを得ない」と「原則反対」の両案を併記していた。

 渡辺町長は受け入れを決めた理由について、「全否定した状態ではJRとの協議に入れない。環境保全をはかりつつ一定程度進めていくということについて舵(かじ)をきったということ。JR東海には環境保全について最大限配慮することを求めていきたい」と述べた。(寺西哲生)

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