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都内、いや日本有数のオフィス街・品川
フードコートの定番といえば何だろうか。この連載でも何度か述べているが、筆者の場合はうどんやラーメン、ハンバーガーなどを思い浮かべる。もちろんフードコートには十人十色の利用方法があり、その思い出も人の数ほど無数にあるものだから、人によって定番は異なるはずだ。
とはいえ「フードコートといえば焼肉だよね」という人はおそらく、ほとんどいないのではないだろうか。実は焼肉店の中でも高級店として知られる「叙々苑」が店を出しているフードコートがある。さらに珍しいのは、ホテル内、それも品川プリンスホテルにあることだ。
フードコートといえば、庶民の味方、市井のオアシス。そんなイメージと真反対な、世にも珍しい高級フードコート「品川キッチン」と、品川の街を今回は見ていこう。
今回は品川をさまよう(筆者撮影)JR品川駅と言えば、言わずと知れた都内有数のターミナル駅だ。
【画像】品川キッチンの「高級フードコート」は身近なオアシス、有名店を背伸びせず楽しめる場所だった…品川の街とフードコートの様子を見る(26枚)JR東海道本線、JR山手線、JR京浜東北線、JR横須賀線、JR東海道新幹線、京急本線の6路線が乗り入れており、JR東日本が公表している「各駅の乗車人員 2022年度」によると、2022年の乗降者数は6位。1日で約25万人もの人が利用しているという。
新幹線に乗る人もいれば、羽田空港に向かう人もいるし、神奈川県の川崎に向かう人もいる。さまざまな人生が交錯する駅なのだ。
駅構内には多くのショップや飲食店が軒を連ねるほか、アトレ品川などの商業施設にもアクセスでき、利便性も高い。それゆえ、旅行で通るという人は、「メルヘンでいつものやつを買おう」とか「品川貝づくしを買うことに決めている」というように、私的ルーティンがある場合も少なくないだろう。
JR品川駅の長いコンコースと、ずらりと連なるデジタルサイネージ(筆者撮影)一方、ビジネスパーソン目線では、「ビジネス街」というイメージが強いかもしれない。実際品川は、ソニーやキヤノンマーケティングジャパン、大塚ホールディングスといった日本企業だけでなく、日本マイクロソフトなど外資系企業も品川駅周辺に拠点を置いているビジネス街だ。
有名企業の本社も多い港南口(筆者撮影)少し歩けば、古き良き宿場町の雰囲気が残る
しかし、実は近辺を歩いてみると、それだけでない、さまざまな面が見えてくる。
例えば線路沿いをものの10分弱歩いた先にある京急本線・北品川駅周辺は3つの商店街がある。品川はかつて、東海道第一の宿場町。その名残を残すレトロな街道が広がり、品川駅周辺の喧騒はどこへやら、といった感じ。寺や神社も多く、街歩きにうってつけのエリアである。
3つの商店街の1つ、京急新馬場商店街の入り口をパシャリ(筆者撮影)寺や神社も多い。こちらはその代表格でもあり、地名を冠した「品川神社」(筆者撮影)品川橋。江戸時代、品川エリアは「東海道五十三次 一の宿」の「品川宿」として、上り下りの旅人で賑わった(筆者撮影)品川宿のまち歩きマップ(筆者撮影)駅から少し離れると、タワマンだけではない風景にも出会うことができる(筆者撮影)ちなみに北品川駅は品川駅よりも南にある。それなのになぜ「北」品川なのか。そもそも品川駅は港区にあり、北品川駅は品川区内の北に位置しているから、というややこしい事情が背景にある。
高輪口はエンタメ色の強いエリア
品川駅に戻り、高輪口へ。ビジネスの港南口、レトロな北品川と打って変わって、こちらはエンタメエリア。
水族館「マクセル アクアパーク品川」に映画館の「T・ジョイ PRINCE品川」といったハコモノがあり、品川プリンスホテルにボウリング場もある。休日ということもあって人けがまばらな港南口と全く違い、大いに賑わっていた。
賑わいを見せる高輪口(筆者撮影)横断歩道を渡り、ウィング高輪を抜けるとこんな景色が広がる(筆者撮影)左が映画館、右が水族館(筆者撮影)今回の品川キッチンがある品川プリンスホテルも、高輪口にある。この辺りはプリンスホテルの牙城ともいえるほどにいくつも施設があり、最も駅チカの品川プリンスホテル、プロ野球ドラフト会議の会場であるグランドプリンスホテル新高輪。さらにグランドプリンスホテル高輪にザ・プリンス さくらタワー東京といった充実ぶりである。
土日でも?だからこそ?満員なフードコート
品川キッチンがあるのは、品川プリンスホテルのアネックスタワー2階だ。
訪れたのは5月の某日(土日)。ビジネス街と言えども、近辺には多くのタワマンがあるせいか、ものすごい人出である。土地と時期的に外国人が多いのかと想像していたが、日本人がほとんどのように見受けられた。
叙々苑がある!(筆者撮影)まず入り口にあるアルコールディスペンサーが、見たこともないシックな感じで高級感を植え付けてくる。
手洗い場のハンドソープも、よくある鮮やかすぎる謎に緑な液体でなく「キレイキレイ」なのが目を引く。あの緑の洗剤で手を洗うと、いかにも「殺菌しました!」的なにおいがして苦手な私は、これだけでもうこのフードコートにメロメロである。
給水場にある紙コップも、何だか通常のものより分厚い高級な素材に感じてきた。中に進むとテラス席もあり、せっかくならと空くのを待って着席する。
このロゴをフードコートで見る日が来るとは(筆者撮影)今回の目当ては何といっても叙々苑だ。ウキウキして向かう。驚いたのが、ガラス越しに見える調理場で、金網を使って牛たんを焼いていること。世界広しといえども、牛たんが食べられるフードコートはそうないだろう。
牛たんを焼いているところを間近に見られる(筆者撮影)DXの波が押し寄せており、注文と支払いは機械から。人気なのか、注文から提供まで30分ほどを要するらしい。
ふつうフードコートで30分はかなりの待ち時間だが、叙々苑となると「いやいやそれくらい余裕で待ちますよ、叙々苑さん」という気分で快諾できる。
30分の待ち時間をつぶすために、他の店も見て回る。
ラーメン店やたこ焼き店、お好み焼き店の他、お洒落系のカレーや、ピザ・パスタを出す店もある。目の前でピザ生地をくるくるしているところを見て無性にピザを食べたくなり、こちらも注文した。
ちなみにフードコートの中央にはドリンクを販売するコーナーがあり、コロナビールやらマリブやら、結構いろいろ売っていた。
テラス席で食べる、ちょっと背伸びなフードコート飯
一通り見たのでテラス席に戻る。品川プリンスホテルのエントランスを眼下に見下ろしながら、夏空のような気持ちの良い青々とした空を見上げながら、今か今かと叙々苑からの呼び出しを待つ。
先に呼び出しがあったのはピザ。間もなく、次いで叙々苑からも呼び出し。30分は待っておらず、おそらく15分くらいしかたっていない。15分待ってはいるのだが、気分は「ラッキー♪」である。
結構本格的なピザが到着(筆者撮影)叙々苑様の焼肉重(筆者撮影)まずはピザ、注文した「ナポレターナ」はトマトソースにモッツァレラチーズ、アンチョビなどがのっている。生地はその名の通り、もちもちとしたナポリ風。薄めなので持ち上げるとトッピングの重さにへたって食べにくい。
おとなしく、添えられていたナイフとフォークで食べるのがベターなようだ。トマトの甘みを感じるソースと、惜しみなくのせられたアンチョビの塩気がマッチしている。見た目だけでなく、味も非常に本格派のピザである。
いよいよ真打ちの焼肉重を実食。見た目は牛丼風だが、牛丼とは違って玉ねぎが入っていない、牛肉一本勝負。脂身の硬さなどは全くなく、肉の風味と脂のうま味、やや甘辛めの味付けでご飯が進む。隅にある紅一点、キムチも単に酸味や辛味を感じるような単純なものでなく、本格派の風味がある。
なんてぜいたくな一口だろう(筆者撮影)ピザと焼肉重、いずれも一般的なフードコートでは味わえない味、そして高級感だ。それに叙々苑を青空の下で食べる体験など、フードコートでしか味わえない。
これまで青空の下で食べるものの中で一番うまいものは、ぶっちぎりでおにぎりだと確信していた私であったが、その牙城を揺るがしかねないほどに、うまかった。
ちなみに冒頭から高級フードコートと書いていたものの、ピザは1枚でそこそこの量。1500円ほどであり、4人家族であればピザ2枚に加え、お好み焼きやたこ焼きなどをチョイスすれば、ちょっとしたところで外食するのと同じか、やや安いくらいに済ませられるのではないか。
家族だけでなく、友人とのお出かけやデートなどにも適しているのはいうまでもない。
【画像】品川キッチンの「高級フードコート」は身近なオアシス、有名店を背伸びせず楽しめる場所だった…品川の街とフードコートの様子を見る(26枚)身近なフードコートでも、高級感は味わえる
腹ごなしを済ませて駅に戻り、アトレのブルーボトルコーヒーでテイクアウトをして家路に着いた。
身近な存在であるフードコートでも、高級感や豊かな時間を味わうことはできる。そうしみじみ思った一日であった。
品川駅近辺や、品川キッチンのその他の写真 前へ-
言わずと知れた、品川プリンスホテル(筆者撮影)
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なかなかレアな高級フードコートだった(筆者撮影)
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「2F フードコート品川キッチン」の文字が確認できる(
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アルコールディスペンサーが洒落ている(筆者撮影)
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このロゴをフードコートで見る日が来るとは(筆者撮影)
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フードコートの叙々苑は、券売機で購入するスタイル(筆者
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叙々苑からの呼び出しを待つ。叙々苑の名が刻印された呼び
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(筆者撮影)
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