──「1on1の翌週に退職」とは、ただごとではないですね。
よく聞く話です。期待の新人を新規プロジェクトに抜擢し、十分にコミュニケーションを取ってきたつもりが、ある日退職代行サービスから人事部に辞表が届いたというケースもありました。本人が直接話してくれない、かつ上司である自分に連絡が来ないとなると、ダブルの悲劇ですよね。
少子化が進み、新卒採用の労力は年々増しています。ようやく採用できた“宝物”に、どうやって定着してもらうか。どの企業も大きなプレッシャーの下で若者を迎え入れています。
経営層を対象とした講演で話すと、休憩時間に「実はうちも困っていて……」と相談に来る部長さんが大勢います。若者を理解できず悩んでいるのは皆同じです。
優秀の圧倒的多数「いい子症候群」
──どんな悩みでしょうか。
若者のことを勘違いして悩んでいるケースがとても多いです。
何十回となく聞いてきたよくある若者評は「1対1だとそれなりに話せる」。皆でいるときはとくに目立たなかったけれど、個別に15分話してみたら自分の考えも意欲もあった──。
ここで終われば何の問題もありませんが、程なくして上司は「あれっ」と思うわけです。1on1で「頑張ります」と言ってくれたのに、日常業務にはとくに変化がない。新規プロジェクトの公募をかけてもエントリーしてくれない。自分が対話した若者の姿と現実が違うので戸惑います。
理由は簡単です。若者からすれば、対話の相手は、味方ではなく評価者です。1対1の場では、評価者に対して上手に演技をしているのです。よく言えば、場に応じた適切なコミュニケーションをしているということでもあります。多くの上司はこれを勘違いして「ぶっちぎりではないけれど優秀だ」と評価します。
──実際には優秀ではない?
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