[著者プロフィル]金間大介(かなま・だいすけ)/金沢大学 融合研究域融合科学系 教授。東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。横浜国立大学大学院工学研究科で博士号取得。博士後期課程在籍中に米バージニア工科大学でイノベーションマネジメントの研究に魅了され、以来イノベーション論、モチベーション論などの研究を進めてきた。(編集部撮影)ここ数年で1on1が急速に浸透した。霞のようにつかめない若者のことを知ろうと、上司世代が取り入れた策の1つだ。しかし懸命に取り組むにもかかわらず、上司は一向に若者を理解できない。それどころか、笑顔で1on1をした翌週に退職届が送られてくるような事態も頻発しているという。どうすれば若者を知り、共に進むことができるのか。『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(金間大介 著/PHP研究所/1870円/336ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──「1on1の翌週に退職」とは、ただごとではないですね。

よく聞く話です。期待の新人を新規プロジェクトに抜擢し、十分にコミュニケーションを取ってきたつもりが、ある日退職代行サービスから人事部に辞表が届いたというケースもありました。本人が直接話してくれない、かつ上司である自分に連絡が来ないとなると、ダブルの悲劇ですよね。

少子化が進み、新卒採用の労力は年々増しています。ようやく採用できた“宝物”に、どうやって定着してもらうか。どの企業も大きなプレッシャーの下で若者を迎え入れています。

経営層を対象とした講演で話すと、休憩時間に「実はうちも困っていて……」と相談に来る部長さんが大勢います。若者を理解できず悩んでいるのは皆同じです。

優秀の圧倒的多数「いい子症候群」

──どんな悩みでしょうか。

若者のことを勘違いして悩んでいるケースがとても多いです。

何十回となく聞いてきたよくある若者評は「1対1だとそれなりに話せる」。皆でいるときはとくに目立たなかったけれど、個別に15分話してみたら自分の考えも意欲もあった──。

ここで終われば何の問題もありませんが、程なくして上司は「あれっ」と思うわけです。1on1で「頑張ります」と言ってくれたのに、日常業務にはとくに変化がない。新規プロジェクトの公募をかけてもエントリーしてくれない。自分が対話した若者の姿と現実が違うので戸惑います。

理由は簡単です。若者からすれば、対話の相手は、味方ではなく評価者です。1対1の場では、評価者に対して上手に演技をしているのです。よく言えば、場に応じた適切なコミュニケーションをしているということでもあります。多くの上司はこれを勘違いして「ぶっちぎりではないけれど優秀だ」と評価します。

──実際には優秀ではない?

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