尿路結石でよくある症状
尿路結石とは、尿の通り道である腎臓や尿管に結石ができて、さまざまな症状を引き起こす病気のこと。最もよくある症状が、背中や脇腹の痛み、血尿だ。
(イラスト:マツキヨ/PIXTA)なぜ結石ができると激痛が起きるのか。荒川医師はこう説明する。
「結石は尿中のミネラルや有機物からできるもので、そのほとんどが腎臓で作られます。まず腎臓の乳頭という場所に結晶ができ、徐々に大きくなっていきます。それが、豆がプチッとさやからはじかれるように飛び出します」
結石が腎臓にとどまっているうちは痛みがほとんど出ないが、細い尿管に落ちると、痛みが出る。実はこの痛み、結石が尿管をこするために生じることもあるが、それよりも大きいのは腎臓が腫れることによる痛みだという。
「尿管に結石がつまって尿の流れがせき止められることで尿が停滞し、腎臓の内圧が上がり、腫れるのです」(荒川医師)
つまり、結石1つで2種類の痛みを引き起こしているというわけだ。
何センチまでなら自然に排出?
腎臓の腫れで起こる痛みは主に背中に生じやすく、尿管がこすられる痛みは結石の位置によって脇腹から下腹部へと帯状に移動していく。結石が膀胱付近まで落ちてくると、残尿感や頻尿などの症状が出ることがある。
また、結石が尿管の粘膜を傷つけることで出血すると、血液が尿と一緒に排出され、血尿となる。そのほか、腎臓の腫れによって反射的に腸の動きが制限され、吐き気や嘔吐などの消化器症状が出ることもあるそうだ。
「理由は明らかではありませんが、尿路結石は夜中に突然、痛みが出ることが多い」と荒川医師。寝ているときに突然激痛に襲われ、救急外来を受診するというのがよくあるパターンだそう。
結石が膀胱まで落ちれば、通常は尿と一緒に自然に排出されるが、そのままとどまることもあり、そうなると治療が必要になる。
結石が自然に排出されるかどうかの1つの目安となるのが、大きさだ。石の大きさが5mm以下であれば、約7割は自然に排出されるといわれている。
「ただし、結石が3~4mm程度であっても、腎臓に尿がたまる『水腎(すいじん)症』を起こしていたり、痛みで仕事に行けないという状況であったりすれば、外科的な治療を検討したほうがいい」と荒川医師。
加えて、大きさだけで判断はできず、過去に何度か尿路結石を経験している人は、1cm近くの大きさでも自然に排出されることがあるため、その場合なら治療は不要だ。
近年は、画像検査の進歩により、人間ドックや健康診断で腎臓の結石が見つかるケースが出てきている。
前述したように、結石が腎臓にとどまっている場合は症状がない、あるいは痛みが軽いことが多いが、無症状だからといって放置してもいいわけではない。大きくなると尿の流れを妨げて結局、水腎症の原因になり、将来的に腎臓の機能を低下させる危険性がある。
石のサイズで変わる治療法
診断は、X線やCT(コンピュータ断層撮影)などの画像検査によって確定する。
治療は大きく分けて2つ。痛み止めで痛みを抑え、尿管を弛緩させる薬を使って石が自然に排出されるのを待つ方法と、外科的な治療によって結石を破砕(細かく砕くこと)し、体外に出す方法だ(詳しくは後述)。
薬によって結石を溶かす治療法もあるが、対象となるのは結石の成分が尿酸結石とシスチン結石だった場合のみ。結石の約8割を占めるのはシュウ酸カルシウムで、この場合、薬で溶かすことはできない。
外科的な治療は、「体の外から衝撃波を当てて、結石を砕く方法」と「体内に内視鏡を入れて砕く方法」がある。
前者は「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」といって、主に1cm未満の小さな結石が対象となる。1cmの結石の場合、うまく的が絞れて、結石が極端に固くなければ、自然に排石できる大きさに砕くことができる。
メリットは外来ででき、全身麻酔なしでの治療が可能なことだ。治療前に痛み止めの坐薬を使用する場合が多い。
ただ、ESWLは結石を砕くだけなので、結石は体内にとどまったままだ。そのため、何らかの方法で石を排出しなければならない。
「この場合、石が出るのをじっと待っているのはよくありません。自然排出を目指すのと同様、水分補給や運動で排出を促します」(荒川医師)
結石を砕いてから自然に排出されるのは、術後数日後のこともあれば、2~3カ月かかることもある。排尿後の尿中に落ちた石を自分で見つけられる場合もあるが、その場合でも体内にまだ残っている可能性があるので、画像検査を受けて確認する必要がある。
一方、1cm以上の結石は尿道から内視鏡を入れて、結石をレーザーなどで砕く「経尿道的尿路結石破砕術(TUL)」が選択されることが多い。大きい石でも確実に砕けて、そのまま取り出せるのがメリットだが、入院が原則で、治療には全身麻酔が必要になる。
尿路結石は5年間で約半数が再発するといわれる。治療後も再発予防に取り組み、医療機関で定期的に再発していないかを診てもらうことも大事だ。
やはり外科的な治療は避けたいものだ。では、結石を出やすくするためにはどうしたらいいか。
石を自然に排出させるポイント
荒川医師によると「水分補給と運動がカギ」だそう。水分補給は尿量を増やすために1日2Lを目標とする。水や白湯、麦茶、ほうじ茶など飲みやすいものがおすすめだという。
結石を動かすのに適した運動には、次のようなものがある。
・立った状態で両足のかかとを上げてストンと落とす「かかと落とし」
・座ったまま、かかとを上げ下げする
・縄跳びのような飛び跳ねる運動
・階段を降りる
尿路結石の痛みは常時続くものではないので、痛みが和らいでいるタイミングで運動を実施するとよいそうだ。
この連載の一覧はこちらそして、痛みがなくなったからといって、結石が排出されたと自己判断するのは禁物だ。
「痛みがなくなると、受診しない患者さんが多いのですが、症状がなくなったからといって、結石が排出されたとは限りません。結石が残っていると腎臓の機能が低下することがあるので、検査をして結石がないことを確認する必要があります」(荒川医師)
結石を作らない生活術はについては、関連記事(「食べてすぐ寝る」人は尿路結石に注意したい理由)をご覧ください。
(取材・文/中寺暁子)
新百合ヶ丘総合病院泌尿器科 尿路結石破砕治療センター センター長荒川孝医師
1979年、北里大学医学部卒。興生会相模台病院泌尿器科尿路結石破砕治療センター所長、北里大学医学部泌尿器科助教授、国際医療福祉大学付属三田病院泌尿器科教授、同院尿路結石破砕治療センター長、国際医療福祉大学医学部腎泌尿器科学教授などを経て2019年から現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本尿路結石症学会名誉会員。
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