約35年にわたり精神科医として高齢者と向き合い「幸せな生き方」をテーマにさまざまな切り口で執筆してきた和田秀樹さん。
第2の人生を楽しむための転換期となるはずの60歳を過ぎても、新たな人生への「ターン」がままならぬ人たちがいると気づいたという。
中でも「やりたい放題」の人生を始められる50~60代のほぼすべての女性たちに「性別役割分担意識」が根強く残り、「やりたい放題」とは真逆の状況に陥っていた。
60代の女性の背中を押すメッセージを込めているという、著書『60歳から女性はもっとやりたい放題』(扶桑社)。自分らしく生きるための第一歩を後押しする、和田さんのメッセージを一部抜粋・再編集して紹介する。
第2の人生は本当の意味で「自分の人生」
面倒な人付き合いなど嫌なことは極力避ける一方で、「やりたいこと」には制限をかけてはいけません。
これからの「第2の人生」は、本当の意味での「自分の人生」になるわけですから、誰かに遠慮したり、世間の目を気にしたりしてはうまくいきません。
そういう姿勢を改めなければ、これから先も「偽りの自己」で生き続けることになります。
もっとも女性の場合、いい意味で切り替えが早いタイプの方が多いので、「偽りの自己」から「本当の自己」へと自分を変える能力も男性よりずっと高いと思います。
この記事の画像(5枚)もちろん、それが何より楽しみというのであれば、これまで続けてきた趣味をさらに極めるというのでも良いのです。
しかし、もしも、ずっとやってみたかったことや興味を持っていることがあるのなら、ぜひ思い切って挑戦してみましょう。
高齢者の趣味というと、俳句とか絵画、陶芸や蕎麦打ちなどがイメージされ、なんとなく人聞きも良さそうに思うかもしれませんが、そんな固定観念にとらわれては絶対にダメです。
例えば若者文化の代表のようなYouTubeの世界だって、たくさんのシニアが活躍しています。
とにかくあらゆるジャンルにいろいろな可能性が広がっているのですから、やってみたいという気持ちがあるのなら、「もう歳だから」などと言って二の足を踏んだり、諦めたりする必要はまったくありません。
「やろうと思えばやれる」前提で
「新しいことへの挑戦」は、脳の若さを維持するのに大きな効果があります。
つまり、新しいことに挑戦すればするほど、若返ると言ってもよいでしょう。
どんなことも「やろうと思えばやれる」という前提で考え、怯むことなく、どうすればそれができるのかを考えてみましょう。
これだけインターネットが発達し、あらゆる情報が簡単に手に入る時代なのですから、それを利用しない手はありません。
例えば海外移住とか海外での再就職など60歳以降で挑戦するのは一見難しそうに思えることでも、うまいやり方を知っている人や、実際にやってうまくいった人が、有用な情報をアップしている可能性は結構高いと思います。
ファッションもメイクも楽しむ
例えば、ファッション誌『ELLE』の日本語版として『anan』(現マガジンハウス・旧平凡出版)が創刊されたのが1970年で、その翌年には『non-no』(集英社)が創刊されました。
『JJ』(光文社)は1975年に創刊され、『CanCam』(小学館)の登場はそれから6年後の1981年です。
つまり、今60代の方というのは物心ついた頃から女性ファッション誌というものが身近にあり、それを購読し実践にうつしてきた世代です。
おしゃれに対するポテンシャルもかなり高いのではないでしょうか?
おしゃれに定年などありませんし、シニアが地味でなくてはいけないなんてことはありません。ド派手な服が着たいならそうすればいいし、金髪にしたいならそうすればいい。
「若い人はいいわよね」などと羨んだりせず、もちろん「年甲斐もなく恥ずかしい」などと考えたりせずに、自分がしたいファッションやメイクを思い切り楽しめばいいのです。
見た目を気にすることの大切さ
女性の「第2の人生」を輝かせるのに、ファッションやメイクが果たす役割はとても大きいと私は思っています。
もちろんそれは、きれいじゃなければ女じゃないといった、極めて個人的で時代錯誤も甚だしい価値観の押し付けをしたいからではありません。
自分の見た目を気にしなくなった瞬間に、人というのは心身共に一気に老け込んでしまうからです。
これ自体は男性にも言えることではあるのですが、一般的な傾向として女性の場合、ファッションやメイク、あるいは肌のコンディションが「見た目の若さ」を左右しやすいというのは否定できない事実だと思います。
そして、見た目が若い人ほど気持ちも若く、体の健康も維持しやすいというのは、多くの高齢女性を見てきた私の偽らざる実感なのです。
「推し活」も良い循環になる
本質的なことを言えば、おしゃれやメイクをすること自体より、それを必要とする機会をたくさん持つことが、心や体を若返らせる秘訣です。
そういう意味で言うと、近年流行りの「推し活」もとてもいいことだと思います。
例えば「推し」がミュージシャンなら、ライブに行くときは最高におしゃれをして出かけたくなるでしょうし、通っているスポーツクラブに推しのインストラクターがいればやっぱりいつもよりメイクにも気を配ったりするわけですよね。
私のクリニックにも、きれいにメイクをしておしゃれな格好で来てくださる方は結構多いのですが、そういう方はやはり、見た目も気持ちも若々しいなと感じます。
「若々しく見える」のを自負することや、周りからそう言われることは、高齢者にとって最高の自信につながります。
それによってますます意欲的・活動的になるのは間違いないので、若々しい気持ちや健康ももたらされるのだと思います。そうしてますます若返れば、これほど良い循環はありません。
だからこそ女性のみなさんには、歳を重ねてからもおしゃれやメイクを大いに楽しみ、ストレスにならない範囲で美容にも関心を持ち続けていただければと思います。
和田秀樹
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹 こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。ベストセラー『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳の老化が分かれ道』(詩想社)、『60歳からはやりたい放題』『90歳の幸福論』『60歳からはやりたい放題[実践編]』『医者という病』(扶桑社)など著書多数
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