早稲田大キャンパスの中心にある大隈重信銅像前でパレスチナへの連帯を訴える学生ら=5月1日(戸田翔さん提供)

 米国を発端に世界各地の大学で、イスラエルのパレスチナ自治区ガザ地区への侵攻に抗議するデモが広がる中、日本の大学キャンパスでも抗議の動きが拡大している。デモを主催した学生の一人は「物事を考えて行動する余裕がある学生から動かないといけない」と意義を強調する。

青学大で「本読みデモ」

 10日午後、青山学院大(東京都渋谷区)の構内にレジャーシートが敷かれ、パレスチナ問題に関する本が十数冊並んだ。「FREE GAZA」や「即時停戦」と書かれた段ボール紙も置かれ、学生らが足を止めて本を手に取った。

 これはガザ侵攻への抗議活動の一種として広まっている「本読みデモ」だ。まずは本を通じてパレスチナ問題について知ってもらおうという試みで、ある男子学生は「同じ米国の大学生が抗議デモで逮捕されているというニュースを見て、関心を持った。ガザでなぜあんなにひどいことが起きているのか知りたかった」。

 デモを主催した同大国際政治経済学部4年の八島望さん(22)は、SNS(ネット交流サービス)でガザの悲惨な人道危機の様子が日々流れてくる中、「国際政治を勉強しながらこのまま何もしないことに耐えられなかった」と語る。

 八島さんは4月中旬、同大の学生ら十数人と集まり、ガザ侵攻の即時停戦などを求める活動を始めた。10日は当初、中庭でテントを設置して始めたが、開始1時間で安全上の問題から大学側にテントの撤去を求められたといい、急きょ規模を縮小した。

東大では「パレスチナ連帯キャンプ」

 東京大駒場キャンパス(同目黒区)の図書館前には、米国の大学に続こうと「パレスチナ連帯キャンプ」が運営されている。

 4月26日から1人で泊まり込みを始めた農学部3年の八十島士希さん(25)は「米国の大学生たちのニュースを見て、いてもたってもいられなくなり来た」。人数が増えるに連れテントの数も増え、これまでに50人以上が宿泊したという。

 教員や学生、地域住民らから応援の差し入れもひっきりなしだが、野営は楽ではなく、八十島さんの手足には蚊に刺された跡がそこら中に残る。宿泊後、昼夜の寒暖差などで体調を崩す学生もいるという。

 大学側には今月6日、米国学生たちの要求を踏襲し、イスラエルや関係企業との連携に関する情報開示と資金引き揚げを求めるほか、イスラエルに関する非難声明を出すことを求める文書を提出し、大学側に回答を求めている。

 八十島さんは「米国と違い、大学からはキャンプ自体は問題ないと言われた。ただ、このまま要求が受け入れられず、学生の体力が先に尽きて諦めざるを得なくなるのが最悪のシナリオだ」と懸念する。

「世界中で学生が立ち上がっている」

大学でのガザ関連抗議活動の例

 抗議活動は各地の大学に広がっており、京都大、明治大、上智大などでも学生がその様子をSNSで発信している。1日に早稲田大(同新宿区)構内でスタンディングデモを主催した文学部4年の戸田翔さん(21)は、「大学生は知識人のはしくれで、世の中で何が起きているかを知り、行動する精神的、時間的余裕がある。私たち学生から動かないといけないというのが原動力」と話す。

 早稲田大では留学生を中心にパレスチナに連帯する団体が立ち上がり、春休みから入念にデモを準備してきた。当日は想定を超える200人以上が集まり、関心の高さを感じたという。当日のスピーチで戸田さんは訴えた。

 「世界中の全ての大陸で学生たちが立ち上がっている。私たちは何より学校、未来、そして命まで失ったパレスチナの学生たちと共に闘っている」【国本愛】

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