特集は自治体が設置する地域の体育館「社会体育館」です。実は全国の中核市の中で2番目に数が多い長野市。長く無料で市民に利用されてきましたが、有料化が検討されています。なぜ、多いのか、有料化は避けられないのか。「社会体育館」の今を掘り下げてみました。


長野市は32施設 全国の中核市で2番目

バスケットボールにー。
卓球ー。
ニュースポーツの「バウンドテニス」も。


いずれも行われている場所は長野市の「社会体育館」です。市内に32施設あり、市街地から中山間地まで広く設置されています。


人口20万人以上の中核市の中では、鳥取市の41施設に次いで全国2番目の多さです。
因みに松本市も25施設と多く3番目。4番目は11施設の奈良市と高松市です。

数は充実している長野市。設置の背景は?

「国体」などスポーツ熱の高まりもあって整備進む

長野市スポーツ課・石坂真 課長:
「わかる範囲で話をすると、昭和46年あたりに作った総合基本計画のところで、各地区に計画的に造っていきたい、計画的に配置と、文言が見て取れるので」


こちらが、その「総合基本計画」。「各地区ごと・概ね半径2キロメートルの範囲で配置をはかる」となっています。

当時は夏目忠雄市長の時代。
「国体」開催などで、スポーツ活動に力を入れ始めていた頃で、続く柳原市長、塚田市長の時代も整備方針は引き継がれました。


長野市スポーツ課・石坂真 課長:
「スポーツ都市宣言(1975年)、長野国体(1978年)とか、高校総体がきっかけかと思うが、スポーツの施設を整備して市民が健康に暮らせるようにというのが背景にあるかと」

1979(昭和54)年の三輪体育館を皮切りに平成にかけてほぼ毎年のペースで建設され、市町村合併を経て32施設に。

松本市も明確な理由はわかりしませんが、国体の主会場となるなど、スポーツ熱が高まりから、設置が進んだとみられています。


老朽化進み、維持管理が課題に…

長野市の体育館は基本的に無料。スポーツクラブから中高年のサークルと幅広い年代に利用されてきました。

しかし、老朽化が進み施設の改修に費用がかかるようになりました。

有料化を検討 2時間2700~3500円程度

そこで…

長野市スポーツ課・石坂真 課長:
「社会体育館の維持をしたり、整備をしたりするコストから出てきたのが使用料の案ということで…」

市は来年度にも有料化に踏み切る方針です。実は県内の他の市は2時間当たり600円から2400円、平均1300円余りを徴収しています。

長野市の場合、維持管理にかかる費用の半分程度を利用者負担にすると、2時間当たり2700円から3500円ほどを徴収することになると言います。

長野市スポーツ課・石坂真 課長:
「老朽化なんかについても手が入れられなかったりとか、お金をかけて整備ができてこなかったことの裏返しなのかなと」


市民からは戸惑いの声

この日、豊野体育館で汗を流していたのは地元のミニバスチーム。


中学校の体育館も含め週3日、練習しています。体育館は3月、床の「長寿命化」工事を終えたばかりです。

メンバー(小6):
「工事して使えない期間があったけど、きれいになった体育館を使えてうれしいです」


一方、保護者は有料化方針に戸惑いを隠せません。

保護者:
「物価高とかもあるので、それに追い打ちをかけるように体育館使用料も…。ちょっと厳しいなという気がします」
「負担が大きくなり、やらないでおこうではないが、チャレンジする精神がなくなっちゃうのかなという気持ちがある」


コーチは理解を示しつつも子どもたちの利用には配慮してほしいと話します。

ゆたかのJBC・女子・武田真治ヘッドコーチ:
「(有料化で)子どもたちがスポーツ離れみたいになってはならないと思うし、行政のはその辺のことをいろいろ考えてほしい」


高齢者「年金暮らしには高い」

一方、こちらは芹田体育館。


行われていたのは「バウンドテニス」。テニスコートの6分の1の広さでプレーできるスポーツです。こちらのクラブのメンバーは多くが60歳以上です。

メンバー(74歳):
「私たちみたいに年金生活に入ってる人にはちょっと高いかなと。建物には関係なく料金決まってくるのか、そうするとアンバランスのような気がする」

メンバー(76歳):
「無料というのが変だったと思う。でももっと安くみんなで使えたらいいと思う」


県バウンドテニス協会の中沢理事長。

予約しても利用しないケースがあることから、有料化でそうしたことが減るのではと期待していましたが…。

県バウンドテニス協会・中沢泰夫理事長:
「ふたを開けてみたら、けっこうな値段。あ然とした。体育館が有料化になり、やめるという人がたくさんいるのではないかと懸念している」


有料化に6割の団体は理解 減免措置も検討へ

2022年、市が約1000の団体にアンケートをしたところ…

「有料とするが、負担は少なくし、負担しきれない分の施設は減らす」が最も多く37%。

「有料とし、施設は減らさない」は26%余り。

一方、「無料のまま、使えなくなるまで使う」が31%余りにのぼりました。

市は「有料化」に6割は理解を示していると受け止め、要望の多い子どもたちの利用の減免措置などを検討するとしています。


中山間地には一定の配慮も

一方、中山間地の体育館は事情がまた異なります。


長野市大岡の大岡体育館で卓球を楽しんでいるのは、地元の卓球グループ。メンバーは60代から80代です。

メンバー(80代):
「この山間地は娯楽施設もスポーツ施設も全くないところなので、唯一のここは憩いの場。週1回、楽しみに汗をかいている」

住民が少ないこともあって体育館の利用率は3割ほど。8割にのぼる市街地に比べかなり少な目です。

でも…。


ひまわり・荒井昭子代表:
「この中山間地域で、高齢者の交流の場、いきがいの場であったり、そういうことは私たちだけではなくて、市も協力して一緒に健康長寿をつくっていかないと。そういうことを考えると一律有料化は解せないなと」


市も中山間地には配慮する方針で、利用率50%以下の施設は料金を4割ほど安く設定し、利用促進を図ることにしています。

無料だったこともあり地域に根付いてきた長野市の社会体育館。しかし、現状では支えきれなくなり、曲がり角に差し掛かっています。

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