10月から窓口負担が増える、保湿用塗り薬「ヒルドイド」=東京都千代田区で、内田幸一撮影

 国は一部の先発薬について患者の窓口負担を今秋引き上げることを決めました。その中には以前、美容目的の利用が問題視された塗り薬も含まれています。負担額増の背景を探りました。

 Q 保湿(ほしつ)用の塗(ぬ)り薬「ヒルドイド」の窓口での患者(かんじゃ)負担額が上がると聞いたよ?

 A その通りです。10月から軟(なん)こうやクリーム、ローションタイプなど5品目で負担が上がります。ヒルドイドだけではありません。特許の切れた先発薬のうち、価格が安い後発薬(ジェネリック医薬品)が出てから5年以上たっているか、後発薬へ50%以上置き換(か)えられているなどの条件を満たす医薬品が対象です。

 厚生労働省が4月に公表したリストでは、インフルエンザ治療(ちりょう)薬「タミフル」や鎮静剤(ちんせいざい)の「カロナール坐剤(ざざい)」など445成分1095品目の負担額が上がります。

 Q どれくらい上がるの?

 A クリームタイプのヒルドイド(100グラム)の場合、3割負担の人で現在の555円から813円となります。先発薬と後発薬との価格差の25%を患者が負担する仕組みです。自治体負担で子供の医療(いりょう)費がゼロになる場合なども、この負担は発生することになります。

 Q どうして負担を引き上げるの?

 A 厚労省が医療費を抑(おさ)えようと後発薬の使用を推し進めているためです。後発薬の使用割合は、2023年9月時点では金額ベースで56・7%ですが、政府は29年度末までに65%以上にすることを目指しています。ヒルドイドに関しては、本来の治療ではなく、美容目的での使用が相次ぎ、「医療費の無駄遣(むだづか)いだ」との指摘(してき)もありました。こうした目的外での使用を抑制(よくせい)する効果も期待されています。

 Q でも治療のために必要な患者さんの負担も増えちゃうんじゃない?

 A 医師が必要と判断した時や、薬局に後発薬の在庫がない場合などは引き上げの対象外となります。必要な医薬品が必要な人に届く仕組みとして機能するといいですね。

回答・松本光樹(くらし科学環境部)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。