女性ゴルファーが増え、定着するために必要なこととは?(写真:つむぎ / PIXTA)

ゴルフ界には、団塊世代が75歳以上となる2025年以降、ゴルフ人口が激減するのではないか懸念する「2025年問題」がある。

一方、コロナ禍においては屋外スポーツで、人との接触が少ないゴルフは感染リスクが低いとされ、若い層を中心に80万人とも100万人ともいわれる「新規ゴルファー」が生まれた。

だが感染の心配が減ったいま、これらの新規参入者がゴルフを継続するかはわからない。

そのため、ゴルフ人口減への対策として、団塊世代のゴルフ継続、コロナ禍で増えた新規ゴルファーの引き留めはもちろんだが、同時に女性ゴルファーの創出も急務となっている。

女性ゴルファーを取り巻く課題

総務省の社会生活基本調査で、2021年の15歳以上のゴルフ行動者数(練習場を含めてゴルフをした人)は763万人余り。ゴルフ人口の男女比は8:2~7:3とされている。

男女比が5:5に近づけば、団塊世代が一斉にやめない限りはゴルフ人口減をある程度食い止められる。団塊世代がゴルフを継続しているうちに、少しでも女性ゴルファーの比率を高めたいものだ。

しかし、ゴルフ界には「女性ゴルファーが参加しやすい環境を作れていないのではないか」「女性の声を反映できていないのではないか」「男社会のままなのではないか」「セクハラが存在するのではないか」といった課題がずっとあった。

これらの課題を解決の一助になるように今年3月、パシフィコ横浜で開かれた国内最大級のゴルフイベント「ジャパンゴルフフェア2024」期間中、筆者も所属している日本ゴルフジャーナリスト協会(JGJA)が、「女性ゴルファーの本音炸裂!!~“ゴルフ村”の常識はアップデートされている!?」と題したセミナーを実施。

一般女性ゴルファーをパネリストに迎えて、閉鎖的、旧態依然としたところも多いゴルフ界について、体験などを交えてざっくばらんに討論した。

このセミナーを開くにあたり、女性を対象にゴルフに関するアンケートを実施したところSNSなどで予想以上に拡散され、12日間で全国から567人の回答が集まった。「ゴルフ界に物申したい」という方が多かったのだろうか。

ほかにも回答を見ると、女性ゴルファーにとって今のゴルフ界で足りないこと、対策や改善すべき点などが述べられていた。

ゴルフ場や練習場、用品業界などの方にも参考になる(耳が痛くなる)ものが多く、もしかしたらゴルフ界に限らず、日本社会全体にも言える話かもしれないので紹介したい。

半数近くが「理不尽」を感じている

アンケートに応じてくれたのは、全国28都道府県の20代から80代までの567人。最も多かったのが50代の233人。ゴルフをやっている人は471人だった。

また267人が「ゴルフ歴でブランクがあった」と答えている。その理由は以下の通りだった。

(画像:日本ゴルフジャーナリスト協会「ゴルフに関するアンケート調査結果」を参考に東洋経済作成)

「ゴルフをする中で『女性だから』という理由で理不尽な思いをしたことはありますか?」という設問については、「ない」が265人。ちょっとホッとしたが、半数近くは理不尽を感じている、感じたことがある、という。

その理由は「用具にバリエーションがない」(84人)、「ティーイングエリアの使用に言いがかり」(71人)、「他のゴルファーからの扱い」(65人)と続く。

「ティーイングエリア」とはホールで最初のショットを打つ場所のこと。飛距離のレベルによってティーマークでいくつかに色分けして設定され、一般男性用のレギュラー(ホワイト)ティー、女性用のレディス(レッド)ティー、シニアティー(ゴールド)などがある。

ティーイングエリアについてはレギュラーティーからプレーしようとしたら、「女だから“赤”からだろう」などの言いがかりをつけられた例が多いようだ。

具体的なコメントを拾うと「女性用トイレが少ない」や、「ロッカールームや浴室が男性よりも貧弱」など施設面についての不満がある。

施設面は改善していけるだろうが、女性ゴルファーに対する偏見は一朝一夕に解決しない。

実際、コメントを見ると、コンパニオンやキャディのように扱われた、という人や、「女性のくせに」や「ゴルフをする余裕がある生活をしている」といった嫌味を言われた人もいた。指導してあげる、と近寄ってくる「教え魔」の存在に嫌気をさす人もいる。

また「前が詰まっているのに、後ろの組から遅いと怒鳴られた」といったコメントからも、女性であるがゆえの理不尽さが感じられる。

逆に「『女性だから』いう理由でいい思いをしたことはありますか?」という設問では、「レディスデーや特典でお得」が169人で最も多かった。

「ジェンダーフリー」が問われている

「今後ゴルフ業界やゴルファーの考え方で『こんな風に変わったらいいのに』と思うことはありますか?」という設問で、最も多かったのは「気軽さに関して」の63人。

具体的なコメントとしては、「スループレーのゴルフ場が増えるとうれしい」「気軽な2バッグス制」「ゴルフをしたいけど環境や仲間がなかったりするので1人でもできるぐらいのラフな環境になれば」「カジュアルに行けるコースを増やしてほしい」などがあった。

スループレーは昼食休憩なしで一気に1ラウンドすること、2バッグスというのは1組2人で回ることをいう。

興味深かったのは、「女性として」という視点でのコメントだ。

「プレーについて女性だからと手を差し伸べられるのを、女性は決して望んでいない」「(男性は)上から目線で接するのを自覚してやめてほしい」など、「女性ゴルファーとしてではなく、同じゴルファーとして考えてほしい」という声が強いのだ。

また「女性が入会できない名門クラブもある」「いまだに男性中心の社交場と考えている点が今の流れに逆行している」といった指摘もあった。

一方で「女性自身も女性だからと甘えることなくゴルフをスポーツとして真剣に取り組んでほしい」という声もあり、真の意味でのジェンダーフリーが問われている。

もともとゴルフが日本に入ってきたとされる19世紀末は明治時代。男性社会で、ゴルフも男性のスポーツとしての時間が長かった。

そのため、歴史のあるゴルフ場では、クラブハウスは男性仕様で、女性用のトイレやロッカー、風呂などは後から付け足した感があるのは否めない。レディスティーの設置場所も、もともとなかったものをホール内にこしらえたので、無理やり作っているところもある。

ゴルフ場やゴルフ用品などハード面の改善については、やろうと思えばできる。その際は女性の視点をぜひ取り入れたい。一方で教え魔や、上から目線の失礼な物言いなどソフト面の改善は、男性側の意識改革に課題解決のポイントがある。

女性の意見に合わせなければいけないということではないが、男性は不自由に感じていないことでも、女性には不自由に感じている部分があるのを、ゴルフ業界としても感じ取らないといけない。

「ゴルフ人口は男性が多いので女性のことはあまり考えていないのがよくわかる」というコメントもあったが、そう言われないよう、せっかく集まった声を生かしたい。

「レディスティー」呼称廃止の改善策

本記事の執筆中、さっそく新しい試みの情報がきた。全国148コースを運営するパシフィックゴルフマネージメント(PGM)が4月1日からティーマーク(ティーイングエリア)の呼称をカラーネーミングに統一することになった。

一番距離が長いブラックから、一番短いピンクまで6段階のティーイングエリアを色で言い分ける。

そのため、これからは「レディスティー」とは呼ばずに「“レッドティー”からやります」とか、「“ホワイト”から行きます」など、男性・女性を問わず、自分の飛距離に合わせて選べる。

これにより、レディスティーの名称で不快な思いをした方にとっては解決策の1つとなりそうだ。

今回のように「現場の声」をもとにした取り組みが広がって、女性はもとより若いゴルファーやこれから入ってくるゴルファーへのアピールになるといいのだが。

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