ラッコのリロと来館者にあいさつする飼育員の秋吉未来さん=福岡市東区のマリンワールド海の中道で2024年3月13日午後2時39分、松本光央撮影

 3月30日に福岡市東区の水族館「マリンワールド海の中道」で開かれたラッコのリロの誕生会。4歳の時に福岡に来たリロはこの日17歳になった。貝殻付きの貝などをプレゼントした飼育員の秋吉未来さん(36)は「思い返すと、いろいろありましたね」とリロに話しかけた。

 リロを担当するのは、同館の海洋動物課の6人。6人はリロの他、ペンギンとアシカも担当する「アシカチーム」のメンバーだ。リロの誕生日に合わせて6人のリロファミリーを紹介する企画の最終回。

大好きなイカを食べるラッコのリロ=福岡市東区のマリンワールド海の中道で2024年3月13日午後2時35分、松本光央撮影

 広島県出身で、小学6年の修学旅行で訪れたのがマリンワールド海の中道だった。イルカショーを見て「かっこいい!」と感激し「イルカのトレーナーになりたい」と夢を抱いた。マリンワールド海の中道では2008年から1年半ほど働き、別の仕事を経て11年から改めて飼育員として働いている。

 リロが福岡に来た12年3月は、後にパートナーとなるマナが生まれたばかり。マナは生後1週間あたりから動きが弱くなって衰弱気味だったため、秋吉さんたちは2月からマナの人工哺育を始め、試行錯誤のまっただ中だった。

リングのおもちゃでポーズを決めるラッコのリロにほほ笑む飼育員の秋吉未来さん=福岡市東区のマリンワールド海の中道で2024年3月13日午後2時34分、松本光央撮影

 生後間もないラッコの人工哺育は国内初の試みで、飼育員たちはマナに付きっきり。和歌山から来るリロを心待ちにしていたが、秋吉さんは「当時のリロの写真がほとんどないんです」と申し訳なさそうに言う。飼育員の懸命な子育てでマナは元気になり、リロと一緒になってから、2頭は仲良しになった。

 21年2月に9歳だったマナが死んで、リロは1頭になった。それでもたくましく、穏やかに過ごすリロ。秋吉さんは「一日でも長く元気な姿を届けられるように、リロが楽しめることをたくさん提供したい」と話し「みんなに愛されるリロくん、ずっと一緒にいようね」とほほ笑んだ。【松本光央】

国内飼育のラッコは3頭のみ

 国内の水族館では1994年のピーク時に122頭のラッコが飼育されていたが、海外から輸入ができなくなり、国内繁殖も難しくなってきたため、現在は3頭まで減ってしまった。3頭は、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)の19歳のメイと15歳のキラ、そして、マリンワールド海の中道のリロ。メイとキラはいずれも雌で、雄はリロだけだ。飼育下のラッコの寿命は20歳前後と言われている。3頭は飼育員やファンに囲まれて元気に暮らしている。

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