秋田県は、1983年に発生した「日本海中部地震」を教訓として、毎年5月26日を「県民防災の日」、5月20~26日までの期間を「県民防災意識高揚強調週間」と定めている。これに合わせ、秋田で起こる可能性がある地震について、秋田大学で地震のメカニズムや防災について研究している水田敏彦教授に聞いた。

【1.日本海で発生する地震について】

 秋田大学地域防災減災総合研究センター・水田敏彦教授:
「マグニチュード7後半の地震が発生しても全くおかしくない。陸地に近いところでは大きな揺れと津波が発生する」

41年前の1983年に日本海で発生した日本海中部地震。秋田沖を震源とするマグニチュード7.7の巨大地震では、強い揺れの直後、東北地方の日本海側を中心に大津波が襲った。この地震で104人が命を落とし、このうち100人が津波の犠牲となった。

 秋田大学地域防災減災総合研究センター・水田敏彦教授:
「太平洋側で発生する地震と違い、地震が発生する震源域が陸地に近いこともあり、津波の到達が非常に早く、10分以内に到達した地震でもある。日本海中部地震と庄内沖地震(1833年)。その間にいわゆる空白域がある。次に起こるのであれば、ここが可能性としては高いのではないか」

秋田県は、東日本大震災が連動型の巨大地震だったことを踏まえて2013年、この空白域を含む秋田県沖の3海域の連動地震について被害を想定している。

想定では、マグニチュード8.7の地震が、男鹿市と三種町に最大震度7の揺れをもたらすとされている。津波は、最も早い男鹿市には地震発生から14分後に到達し、その高さは最大9.8メートル。冬の深夜2時に発生した場合、死者は1万2600人に上るとしているが、発災後すぐに避難することで犠牲者は8800人ほどに減らせるとしている。

【2.秋田県の陸域で発生する地震】

 秋田大学地域防災減災総合研究センター・水田敏彦教授:
「もう1つは秋田県の陸域で発生する(深さ約20キロより)浅い地震。震源の近くでは非常に大きな揺れに見舞われて、例えば震度6強や震度7の地域が出てくる」

元日に発生した能登半島地震で、222人の犠牲者の4割を占めたのが、倒壊した建物の下敷きになったことなどによる「圧死」だった。

「地理的な条件が似ている」と指摘され、現在、防災計画の見直しが進められている男鹿半島では、1939年5月1日に直下型の「男鹿地震」が発生している。マグニチュード6.8の地震で、現在の男鹿市船川港や五里合で最大震度7の揺れを観測。液状化現象の影響などで交通網が寸断され、復旧に支障が出た。県内では27人が亡くなり、その6割以上が家屋の倒壊によるものだった。

 秋田大学地域防災減災総合研究センター・水田敏彦教授:
「男鹿地震については、能登半島地震と非常に被害について共通点がある。男鹿半島の中心部で大きな揺れに見舞われ、家屋がたくさん倒壊している。斜面崩壊や地面の液状化現象も広い範囲で発生し、被害を拡大させている」

男鹿市内の住宅の耐震化率は、市の2020年度の推計で64%にとどまり、3974棟で耐震化が不十分とされている。男鹿市は、耐震診断士の派遣や耐震改修・改築などの支援を進めているが、2019年度からの5年間で、診断士派遣の9件のみにとどまっている。

 秋田大学地域防災減災総合研究センター・水田敏彦教授:
「災害の発生を防ぐことはできないが、被害を減らす“減災”はできる。住宅の耐震化を何とかして進めなければいけない。壊れない家はいくらでもできる技術もあるし、建物もそうした技術が確立されているが、社会的背景などによってできていないので、何とかしないといけない。能登半島地震によって、さらに改めてそう思った」

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