車体載せ作業の様子=JR東日本大宮支社提供

 「デゴイチ」の愛称で親しまれる蒸気機関車「D51」を使った七つの有料イベントを埼玉県のJR東日本大宮支社が6月に順次開催する。車体を間近に見られるほか、試運転中の運転室助手席に乗れたりと貴重な体験になりそう。ただ、1人当たり10万円を超える値段設定も。その強気な訳とは?【瀬尾忠義】

 D51は、かつて列島の物流を支えてきた「力持ち」で、蒸気機関車といえばその名を挙げる人は多いだろう。JR東日本によると、D51は1936(昭和11)年から50(同25)年にかけて1115両が製造され、主に貨物をけん引してきた。今回のイベントに登場するのは「D51 498」。498番目の機関車で、40(同15)年に製造され、32年間活躍した。引退後は「静態保存」されていたが、88(同63)年に「動態保存」の蒸気機関車として復活した。今は「SLぐんま」として現役で活躍している。

 イベントは、大宮総合車両センター(さいたま市大宮区)が創立130周年を迎えることを記念して企画。センターで2~4年ごとに修繕を行っているD51を主役に据えた。

 参加者は普段は入ることができない車両センター内で、メンテナンスを行っているD51の姿を見学、撮影できる。「漆黒の空中散歩」と名付けられたイベントでは、D51の車体をクレーンでつり上げ、台車と車輪に載せて組み合わせる作業を撮影できる。また、修繕時のみ行うボイラー内の異物を噴出させる「吹き込み作業」や、線路下のメンテナンス用通路からの撮影もできる「火入れ作業見学会」なども企画された。大宮支社は「古き良きD51との思い出を残してみてはいかがでしょうか」とアピールする。

吹き込み作業のワンシーン(写真はD51ではありません)=JR東日本大宮支社提供

 気になる値段だが、1人当たり3万円からという強気と思える設定だ。その中でも「あなたの特等席」とした試運転乗車体験会は、車両センター構内を試運転走行するD51の運転室助手席に乗車して約1・7キロを2往復する内容で、13万円。いずれのイベントも2時間以上の枠を設定しているので、車体の見学や撮影はじっくりと楽しめそうだ。

 値段設定について、大宮支社の広報担当者は「めったに見られないD51の姿を間近に見学、撮影できる機会であることを考慮して決めました」。蒸気機関車ファンにとっては、飛び抜けて高い値段ではないということなのだろう。

 また、参加特典としては、130周年を記念したヘッドマークをもとにした手作りのオリジナルコースターを配布する予定だ。「車両センターで電車の車体や部品の溶接、加工作業を担当している社員がデザインしました」(広報担当者)

 有料イベントの値段は張るけれども、鉄道ファンからすれば特別な体験となり、JRにとっては新たな「商品」になり得る可能性を秘めていると言えそうだ。

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