新型コロナウイルスワクチンなどの予防接種の記録について、厚生労働省は、保存期間を現行の5年間から延長する方針を固めた。新たな保存期間は未定だが、「生涯」も検討する。保存期間のルールが変われば、2007年に予防接種法に明記されてから初めてとなる。
長らく不変のルール
予防接種のうち、法律に基づいて市町村が行う「定期接種」(風疹や結核、B型肝炎など17疾病が対象)や緊急時に行われる「特例臨時接種」(3月までの新型コロナワクチン)の記録は、市町村が保存。住所や氏名、生年月日、接種日などを載せた「予防接種台帳」を電子データなどで保有している。義務付けられた保存期間は、予防接種法の施行規則に基づき5年間だ。
保存期間が法律に盛り込まれたのは07年だが、5年間のルールは厚労省が1976年、都道府県に通知している。それ以来ルールは変わっていないとみられる。
こうしたなか、21年に新型コロナワクチンの接種が国内でも始まった。開発から短期間で実用化されたワクチンだったため、将来の健康への影響も想定して接種記録の保存期間延長を求める声が全国の自治体から上がっていた。東京都小平市と水戸市が保存期間を30年、千葉県我孫子市が10年とするなど独自に延長する動きも出た。
専門家「生涯保存が望ましい」
厚労省は24年3月、厚生科学審議会の予防接種基本方針部会に保存期間の延長案を示し、了承された。委員の医師や大学教授からは「生涯、自分の接種歴が分かるような形が望ましい」「ワクチンの有効性、安全性を検討するためには、長期間の記録が必要だ」などの意見が出た。
厚労省は、保存期間の延長を26年度に実現予定の「予防接種事務のデジタル化」に合わせて行う方針だ。マイナンバーカードを活用してオンラインで接種記録を管理するもので、長期保存がしやすくなる。
予防接種には、季節性インフルエンザワクチンなど希望者が各自で受ける「任意接種」もあるが、この記録の保存ルールはない。新型コロナワクチンは4月以降、呼吸器などに障害がある60~64歳と、65歳以上のみが定期接種で、それ以外は任意接種になっている。このため4月以降、65歳未満が新型コロナワクチンの接種を受けても原則、記録は保存されない。
厚労省の担当者は「保存期間の延長は、コロナで見えてきた課題を踏まえた。具体的な延長期間はこれから詰めていきたい」と話している。【遠藤浩二】
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