<Q> 子どもが独立し定年も近づいているため、近い将来に家を売って住み替えることを検討しています。ただ、不動産を売ったことがないので進め方がわかりません。売却はどのような手順で、どんな点に気を付ければいいでしょうか。

◆査定経て媒介契約 建設コンサルタント・草野芳史さん

<A> 定年などの転機を前に自宅の売却を検討するケースの一般的な手順について、流れに沿って説明します。  まず大切なのが方針です。本当に売るのか。今後の住まいをどうしたいか、どういう暮らしをしたいのかを考えてください。自宅をリフォーム、または建て替えて住み続けるという選択肢があってもいい。もしくは、この家は大きすぎる、子や孫の近くに住みたい、などの理由で住み替えようというのもありです。若いうちにライフプランを考え、老後のビジョンを持っていれば理想的です。  次に子どもや親族の意向です。子どもが将来的に生まれ育った家に戻りたい場合や、代々相続した財産を手放すことに親族から異論が出る可能性もあります。加えて相場がどのくらいかという情報収集も必要です。インターネット上の不動産のポータルサイトである程度の傾向はつかめます。相場を把握した上での検討を勧めます。  査定は不動産会社が無料でやってくれます。経験や得意な分野が違う場合もあり、地元の会社は地域を知っているという利点もあります。大手と地場を合わせて2~4社ほどに頼むのが無難です。会社によって二、三百万円ほど差が出ることも。査定が高い会社にお願いしたいのが人情ですが、査定額は買い取り額ではありません。高い査定の会社に頼んで、数カ月売れずに「価格を下げませんか」と言われる例もよくあります。査定の理由を聞き納得できる答えがあるかどうかを確認してください。  査定に納得したら媒介契約を結びます。複数の不動産会社に売却を依頼できる「一般媒介契約」、1社のみに依頼する「専任媒介契約」、自分で買い手を見つけても直接取引ができない「専属専任媒介契約」の3種類があります。不動産会社は、競合しない専任や専属専任で契約したがる場合が多い。じっくり売ってくれるメリットがあり、高く売りたい場合、これらの方法でお願いするという考え方もあります。一つの目安として、人気のエリアなど売りやすい物件は一般でもいいと思います。  売却活動で大事なのが条件設定です。例えば、どれくらいの期間売れなければ条件を見直すか。住み替えの場合は新居との兼ね合いもあります。売却とタイミングを合わせて住み替えられるのが理想的ですが、簡単ではありません。例えば早く売りたければ、相場より安めにするという選択肢も考えられます。  媒介ではなく、買い取ってもらう方法もあります。早く売りたいのなら最も適した手段ですが、売却価格は安くなります。良くて相場の8割、条件次第でもっと下がる場合が多いです。  購入の希望者がいれば、内覧の対応が必要です。部屋の状況によって印象が違いますので、結構重要です。交渉がまとまれば契約の締結。契約後には、残債がある場合にはローンの処理や手続きがあります。引っ越しの準備なども重なり、実務的にばたばたするケースが多いです。

<詳しく!>税金かかるケースも

 売却で得た利益には税金がかかる場合もある。売却収入から、住宅を買った時の代金と、不動産会社に払う仲介手数料などの経費を引いた額が譲渡益となり、所有期間によって変わる税率をかけて納税額が決まる。購入額がわからない場合は売れた額の5%を取得費として差し引く。  不動産の譲渡益への課税にはさまざまな優遇制度がある。自宅を売却した場合、譲渡益が3千万円までは、特別控除で税はかからない。一定の条件を満たせば3千万円超の分の税率を軽減できる特例や、買い替えの際に適用できる特例もある。草野さんは「併用できるものも、できないものもある。何が使えるかを不動産業者などに確認し、具体的な計算が必要なら税理士に相談を」と助言する。 (海老名徳馬) <くさの・よしふみ> 1971年生まれ。建設コンサルタントとして業界に長く携わり、住宅の購入に特化した相談を受ける。2017年に開設した「家計とマイホーム相談室」(名古屋市中村区)の代表。


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