秋田・羽後町に老舗和菓子店を受け継いだ夫婦がいる。「幅広い世代にもっと気軽に生菓子を楽しんでもらいたい」と新たな挑戦を始めた夫婦の思いを取材した。
100年以上続く老舗和菓子店
かわいい柴犬や三毛猫の顔。一つ一つ丁寧に手作りされた「上生菓子」だ。
この記事の画像(11枚)羽後町西馬音内で明治時代から100年以上続く老舗和菓子店「菓子司 万寿堂」。
地域の名物としても知られる「橋場まんじゅう」や「西馬音内まんじゅう」は、遠方からも買い求めに来るファンが多くいる。
万寿堂の5代目として店に立つのが、矢野圭伍さんと妻の萌加さん。動物の上生菓子は2人の共作だ。
矢野さんは高校を卒業後、関東の製菓学校を経て、和菓子店で修行を積んだ。そして、修行先で出会った妻の萌加さんとともに、2023年の春、古里に帰ってきた。
万寿堂・矢野圭伍さん:
高校まで両親に野球をさせてもらったので、恩返しではないが自分が長男なので。亡くなった祖父母から「父の手伝いをしなさい」と常々言われていたのが幼い頃の記憶にある。「俺が継ごうかな」と思い継いだ
父の反応については「あんまり顔には出さないが…。はっきりはちょっと分からない」と話す矢野さん。
4代目である父の圭一さんは、「うれしかったですよ。これからまだまだだと思うので、一緒にいろいろやっていけたら」と照れながら喜びを言葉にする。
茨城県出身の萌加さんも、夫の「家業を継ぐ」という思いに寄り添い、サポートしている。
万寿堂・矢野萌加さん:
最初から旦那についていくつもりで一緒に来たので、迷いとかは特にない。1年くらい西馬音内にいるが、やっと地元の言葉も理解できてお客さんと話せるようになったので、とてもうれしい
地域の人からのリクエストがきっかけ
家族の思いを胸に、5代目として地元に帰ってきた矢野さん。家族と一緒に店を切り盛りする中で新たな試みも始めた。それは、誰でも気軽に手に取れる「上生菓子」の販売だ。
地域の子どもたちやお年寄りからのリクエストを受けて始めた「上生菓子」。デザインはすべて萌加さんのアイデアだ。
万寿堂・矢野萌加さん:
小さい子どもが商品を見てはしゃいでいるのを見ると、すごくうれしい気持ちになる
万寿堂・矢野圭伍さん:
見せたときに「わぁ!」ってみんなが言ってくれるので、作って良かったなという感じ。できれば来年もという話があるので、やって良かった
「和菓子を気軽に楽しんでもらいたい」
SNSでも情報発信し好評の上生菓子は、歴史ある和菓子店に新たな風を吹かせている。動物のほかにも花をイメージしたものなど、生菓子は見た目のかわいさはもちろん、味にもこだわる。
練り切りは乾きやすい素材なので、乾くと食べたときにおいしくなくなってしまう。
圭伍さんは“できれば速く”を心掛けながら、線一本に納得がいかないとやすりで削ったり、木の型から作ったりなど、納得がいくまで自分の中で追求しているという。
老舗を受け継ぐ矢野さんには目標がある。
万寿堂・矢野圭伍さん:
もっといろいろな世代の人、若い人やお年寄りに和菓子を気軽に楽しんでもらい、その上で「万寿堂」という名前をもっとたくさん広められたらいいなと思う
老舗の伝統に新たな風を吹き込む。矢野さんの和菓子作りへの挑戦はまだまだ続く。
(秋田テレビ)
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