(写真:elise/PIXTA)

スニーカー通勤の定着により、これまで以上に「靴に違和感がある人」が増えています。

「足元を見る」の語源からも、ビジネスシーンにおける靴の重要性は周知のとおり。建前では取り繕えない情報が足元にあることを、感覚的に理解している方も多いのでは。

そして4月は、オフィス来客の顔ぶれも変わるため、たとえ営業職ではなかったとしても、普段以上に「靴を見られている」と考えておきたいのです。「足元の印象で失敗しない」ポイントについて、のべ5308人のビジネスマンの買い物に同行してきた服のコンサルタントがお伝えします。

「靴だけ、印象が浮いてしまう」状態にハマるワケ

コントラスト差を抑えた茶の革靴コーディーネート(写真:筆者撮影)

「靴だけ浮いてしまう」という違和感を抱いた経験はありませんか。通勤スニーカーのみならず、革靴でさえも「足元が悪目立ち」というケースを見かけます。たとえば「ダークカラーのスラックスに茶の革靴」という組み合わせでは、視線が足元に集中してしまうもの。

その原因は、スラックスと靴の「コントラスト差が強すぎる」ことが関係しています。この差を弱めるために、スラックスのトーン(明るさの度合い)を意識してみてください。黒・濃紺ではなく、ブルー見えする明るい紺色やグレースラックスを、茶靴に合わせるだけで、強すぎた靴の存在感が弱まります。

この足元の境界が悪目立ちしない状態を、私は「足元の繋がり」と呼んでいます。これは全身を馴染ませる工夫として、スニーカー通勤のコーディネートにも役立つ手法ですが、スニーカーと革靴における「ドレス感のちがい」に目を向ける必要も忘れてはいけません。

色では判断できない「通勤スニーカーの基準」

ビジネスファッションでは、ドレス感を高めるため、スーツのように「全身の色数を絞ることが良し」とされてきました。だからこそ通勤スニーカーにおいても、余計な色がない「白・黒などの無彩色が主流である」ことはご存じのとおり。

左は革靴の木型、右はカジュアルな木型(写真:筆者撮影)

ですが「黒スニーカーなのに、スラックス姿が野暮ったい」というケースを見かけませんか。この現象は「カジュアルな木型」が原因で起きています。木型とは、靴のフォルムを左右する設計図のようなものですが、スニーカー単体を見て判断しづらいものです。そこでスニーカー通勤を想定したカテゴリーのなかから、靴を選びましょう。

木型によってフォルムも異なる(写真:筆者撮影)

「スマートスニーカー」と呼ばれるカテゴリーのものは、革靴の木型を意識したフォルムのものなので、結果として革靴の木型を選んでいることになるはずです。

とはいえスマートスニーカーという言葉自体が初めての方もいらっしゃると思いますので、その特徴について言及します。

2種類のスマートスニーカー!合わせ方のポイント

キメが細かいスムースレザーをあしらったスマートスニーカーは、革靴のようなシンプルなデザインが基本ですが、なかでも「2種類に分かれる」と私は見ています。

コンパクトな木型のスマートスニーカー(写真:筆者撮影)

「スニーカーソールが目立たないコンパクトなもの」と「白いスニーカーソールを際立たせたもの」、どちらもランニングシューズのようなカジュアル要素は排除していますが、合わせ方のポイントは異なります。

たとえばスニーカーソールが目立たないコンパクトなものは、ボリューム感も革靴に近いため、黒を選んでおけば、色を問わずスラックスを合わせやすいでしょう。ただし、はき心地については「革靴に近いものが多い」のです。

白いソールのスマートスニーカー(写真:筆者撮影)

一方、白いスニーカーソールが際立つものは、足に負担を掛けない「はき心地」と「印象」を両立させてくれますが、靴の色数が2色になるため、アッパーソールとスラックス色については、必ず合わせてください。というのもスラックス次第では、足元の色数が3色で散らかった印象に陥ってしまうからです。

つまり白いスニーカーソールの通勤スニーカーを選ぶ場合、「合わせるスラックス色が縛られる」ということ。この状況を見落としていたとき、スニーカーのドレス感は合っているはずなのに、スニーカー通勤が野暮ったく見えていたのです。

スーツにネクタイを締めていた時代にはなかった「足元の盲点」については、ご存じでしょうか。それは「とりあえず黒い革靴ならばOK」という誤解です。ビジネスファッションの多様化によって、ピカピカに磨き上げた「黒い革靴」が悪目立ちしてしまうケースも出てきました。

たとえば「光沢がないチノパン」や「ウォッシャブルの化学繊維スラックス」では、ピカピカの黒革靴が浮いてしまいます。手入れが行き届いた黒革靴は、本来ホメられるもの。にもかかわらず「カジュアルパンツにたいして、靴のドレス感が強調されてしまう」のです。これがアンバランスに見えてしまうのです。

ドレス感ある黒い革靴は、「微光沢ある天然繊維のウールスラックス」に馴染みます。一方、ツヤのないチノパンやテカテカの化学繊維では、フォーマル過ぎない革靴を選びましょう。その基準は「革底ではなく、ゴム底の革靴」という判別が簡単です。

パンツの生地次第では、ピカピカの高級感ある革靴が正解とは限らず、むしろ大事なポイントは、「靴単体ではなく、靴とスラックスのバランスを見ること」だったのです。スーツにネクタイだらけの時代にはなかった視点と言えます。

靴を「主役ではなく、名脇役」と捉える

冒頭で紹介した「足元を見る」という言葉からも、靴の重要性については、誰もが認めるところ。だからこそ主役として捉えがちですが、これは大きな誤解です。足元のコーディネートが上手な方は、靴を主役ではなく「全身を整える名脇役」として捉えています。

だからこそ金具がついたローファーは、余程の理由がない限り、おすすめしません。モンクストラップと呼ばれるバックルが付いた革靴とは別物、いわゆるローファーです。もちろん「着脱で手間取らない」というメリットもありますが、そもそも紐のないローファーの語源が「怠け者」を意味する言葉であることは有名な逸話です。

勘のいい人は、他人の足元を通じて、「考え方やパーソナリティー」をキャッチしてしまうからこそ、足元の存在感を程よく弱める名脇役なコーディネートを意識してみてください。

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