千葉県の木更津と言えば、東京湾アクアラインにアウトレット、そしてヤンキー。ロックバンド「氣志團(きしだん)」やテレビドラマ「木更津キャッツアイ」の影響だろうか。そんなヤンキーのイメージをファッション面から発信してきたのが老舗メンズ衣料品店「あさひや木更津」だ。4代目店主の笹川容子さん(60)に、ヤンキー・ファッションの今を聞いた。【浅見茂晴】
――このお店はどんな歴史を歩んできたのですか。
◆創業は1906(明治39)年です。港を中心に栄えた木更津のまちの東はずれに店を構えたことが店名の由来。内房線が木更津まで開通する前のことで、足袋や作業服の製造・販売でスタートしました。当時使っていた輸入ミシンも残っています。戦後は輸入デニムなどを扱うようになりました。高校生が来るようになった70年代後半〜80年代は「ツッパリ」の象徴、変形学生服の「ドカン」「ボンタン」なども扱っていました。
東京湾アクアラインの開通(97年)で、東京が隣町のようになったことで、地元に残る若者が比較的多くなりました。そうして仲間意識が深まったことがヤンキー(イメージ)を生んだのではないかと思います。昔は船橋の方が怖いと感じていましたけどね。
――別名「ヤンキーショップ」とか。
◆氣志團の綾小路翔さんがテレビ番組で、高校時代に来店していたことを明かし、ヤンキーショップと紹介したことがきっかけ。バラエティー番組で取り上げられたり、芸能人が私的に訪れた際、SNS(ネット交流サービス)にアップしたりして広がりました。
先代からは「どこにもない物をそろえろ」と教えられましたが、ファストファッション全盛の時代、まちの衣料品店は個性がないと太刀打ちできません。
――最近はどんな服が人気ですか。
◆袖がコイの口のようにすぼまっている鯉口(こいくち)ダボシャツは、コロナが明けてお祭りが再開した昨年から需要が出てきました。犬の「ガルフィー」をあしらったTシャツは90年代から流行が続き、豪華なカラースーツは矢沢永吉さんのファンやカラオケ大会に出場する人が買っていきます。
米海軍基地がある横須賀生まれの色鮮やかなスカジャンも昔から取り扱っています。かわいい刺しゅうが入っているので女性にも人気です。
――買いに来る人に変化はありますか。
◆夜、スーツに着替えて街に繰り出したバブル時代と比べて、長い不況が続き、車にも服にもお金を使える時代ではなくなりました。でもヤンキーマインドは今も漫画やドラマに受け継がれています。10~20代のキラキラ輝いていた時代のファッション体験が原点となり、大人になっても着続けるし、次世代にも継承されるのではないでしょうか。
一方で、昨今の円安でハワイから取り寄せてきたアロハは採算が合わなくなりましたし、スカジャンは作り手が70代で、あと10年続くかどうか……。
SNSの発達で海外からも注文が入るようになりましたが、せっかくの路面店ですので、近隣の方はぜひお店にお越しいただければうれしいです。
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