横浜市で開催された核兵器保有国と非保有国の有識者が核廃絶に向けて話し合う「国際賢人会議」で、人工知能(AI)などの技術革新が核戦争の危険を高めることへの懸念が示された。人間の関与なしに敵を殺害する「自律型致死兵器システム(LAWS)」を規制する国際ルールはなく、核とAIについて国際的な議論は始まったばかりだ。(中沢穣)

 国際賢人会議 核廃絶をライフワークとする岸田文雄首相の提唱で2022年から始まった。核兵器保有国と非保有国の有識者が核廃絶の道筋を話し合う。初会合は被爆地・広島で開催された。

 賢人会議は横浜市で今月21日から2日間の日程で開かれ、核攻撃の標的決定やミサイル発射の判断など、核の運用をAIに委ねた場合の問題について多角的に議論した。AIを活用した兵器はウクライナやパレスチナ自治区ガザでも使われているとみられるが、技術の進歩とともに核運用にも使われる恐れがある。

◆「予測できない危険もたらす」「軍備・軍縮の検証に活用できる」

 白石隆座長(熊本県立大学特別栄誉教授)は会合後の記者会見で、AIの活用は核兵器を巡る新たなリスクを生むため、核運用や管理への「人間の関与」が重要と訴えた。AIの導入が予想できない危険をもたらす恐れも指摘した。

22日、横浜市で、会合を終えて記者会見する賢人会議の白石隆座長(左から3人目)ら

 これに対して、賢人会議に参加したローズ・ガテマラー元米国務次官は「膨大な量のデータを分析できるAIは、核を含む軍備管理や軍縮の検証にも活用しうる」と利点を強調した。  賢人会議は2026年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けて提言をまとめる方針で「人間の関与」の重要性に加え、軍備管理などAIの新たな活用に向けた見解も盛り込まれる見通しだ。

◆核保有国にも危険性の認識あるが…

 核兵器使用に関する判断をAIに全面的に委ねる危険性は、一部の保有国の間で認識されている。  米国務省のディーン筆頭次官補代理(軍縮担当)は今月2日のオンライン記者会見で「米国と英国、フランスは、核兵器使用に関する決定をAIに委ねることは決してない」と述べ、ロシアと中国にも同様の対応を求めた。  14日には、米中両政府のAIに関する初めての対話がスイス・ジュネーブで開かれ、核兵器を巡るAI活用も議題になったとみられる。核に関する判断にAIを活用した場合、どのような意思決定プロセスがあったのか分からなくなる危険性も専門家から指摘されている。  核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のメリッサ・パーク事務局長は昨年11月に出した声明で「AIはすでに受け入れられないレベルにある核の危険に、新たなリスクを加えつつある」と指摘。全ての国家に「核廃絶への取り組み」を求めている。 

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