税金や国債などを積み立てて中長期的な政策を進める国の基金を巡り、残高約17兆4000億円のうち、少なくとも約7兆4000億円は国庫返納の必要があるとする試算を衆院調査局がまとめたことが分かった。政府は4月、基金の見直しで2024年度末までに5466億円を国庫返納する方針を示したが、さらなる不用額が基金にため込まれている可能性があり、再点検が急務だ。

◆「適正」は200基金のうち、わずか49

 基金の調査は立憲民主党の城井崇衆院議員が依頼した。試算では、全200基金の過去3年間の支出実績を必要額とみなし、それ以上に保有している残高を国庫返納が必要と定義。新設されたばかりで過去3年間に支出がない基金などは、衆院調査局が所管する府省庁の公表資料から必要額を機械的に算出した。  災害など不測の事態に備える目的で設置した基金や、今後3年以内に事業を終える基金を除外した結果、7兆4164億円を国庫返納すべきだとはじき出した。試算の条件次第では9兆2247億円にも上った。一方、残高と必要額がほぼ一致し、適正水準にある基金は49だけだった。  政府の行政改革推進会議は昨年12月、「基金への新たな予算措置は3年程度とする」との方針を決定した。一度に投じる予算は3年程度の必要額に絞ると上限を設けた一方、3年分よりも多くの予算をため込んでいる既存基金に対する方針は定めなかった。  同会議は4月、23年度の計約4342億円、24年度の計約1124億円について、支出の見込みがないとして基金から国庫に返納させると発表した。基金の水膨れを問題視する立民など野党は、依然として不用額がため込まれているとして、返納額の上積みを求めて国会で追及する構えだ。(山口哲人)

 国の基金 複数年度にわたる特定の事業向けにためておく資金。単年度主義を原則とする予算の例外で、中小企業や生産者らへの弾力的な補助金交付など柔軟な運用が可能な一方、国会のチェックが行き届きにくい。運営主体は、府省庁が選定した独立行政法人や国立研究開発法人など。無駄遣いや必要以上にため込む問題も相次いでおり、「埋蔵金」「たんす預金」などと批判される。



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