自民党派閥の裏金事件を受けて、自民が提出した政治資金規正法改正案が5日、衆院政治改革特別委員会で自民、公明両党や日本維新の会の賛成多数で可決された。採決に先立つ質疑では岸田文雄首相(自民党総裁)が、法案内容について「これから検討する」と歯切れの悪い答弁を繰り返した。反対した立憲民主党などは「問題先送りの逃げ切り法案だ」と批判した。法案は、6日の本会議で可決され、衆院を通過する見通し。

衆院政治改革特別委で答弁する岸田首相

◆「感熱紙タイプは印字が残らない」

 答弁に立った首相は、公明や維新の要求を受けて修正した自民案について「思い切って踏み込んだ案を示す決意をして実行した」と強調した。議員立法の審議に首相が出席するのは異例だが、自民案の修正過程で公明、維新両党と党首会談を行うなど、主導的な役割を果たしたことから、野党の出席要求に応じた。  採決直前の審議で野党各党の質問は、政党から党幹部らに支出される政策活動費に集中した。維新の要求を反映させた「10年後の領収書公開」が今後の検討課題になったが、国民民主党の長友慎治氏は「感熱紙タイプの領収書は10年後には印字が残らない」などと指摘。首相は「法案成立後、検討が行われる」と正面から答えなかった。  政策活動費が党幹部を経由して国会議員や地方議員に渡った場合に、最終的な使途は不明となる可能性も問題視されたが、首相は明確に否定しなかった。

◆衆院特別委の審議はわずか13時間

 第三者機関の設置時期も条文に明示されていないことから「結局できないのでは」との指摘には「できるだけ早く進めていくことが重要」と、かみ合わない答弁をした。首相の曖昧な説明に、立民の岡田克也幹事長は「単なる先送りに過ぎないのではという疑念が国民の中にある」と懸念を示した。  衆院特別委での審議時間はわずか13時間。修正協議のほとんどは非公開の場で行われた。反対討論に立った衆院会派「有志の会」の福島伸享氏は「骨太な令和の政治改革の議論がほとんどされなかったことは残念でならない。何をそんなに急いでいるのか」と自民の姿勢に疑問を呈した。共産党の塩川鉄也氏は討論で「拙速な審議で採決することに断固抗議する」と訴えた。(井上峻輔、大野暢子、近藤統義) 

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