児童手当拡充などを柱とした少子化対策関連法は5日の参院本会議で、自民、公明両党の賛成多数により可決、成立した。財源として2026年度から公的医療保険料と合わせて徴収する「子ども・子育て支援金」を創設。長年の課題だった子どものための安定財源の確保に道筋を付けた。だが岸田文雄首相は、支援金による国民負担は「実質ゼロ」との主張を最後まで続け、「負担増」を正面から説明していないと指摘する立憲民主や日本維新の会、共産、国民民主など野党はそろって反対に回った。(坂田奈央)

◆負担増の懸念は消えず

参院本会議で少子化対策関連法が可決、成立され一礼する加藤こども政策相

 首相は国会審議で、支援金制度によって国民に実質的な負担が生じないとする根拠として、個人や企業の収入を合わせた国民所得を分母、社会保険の負担を分子として計算する「社会保障負担率」を取り上げ、賃上げなどの効果によって負担率は上昇しないと強調してきた。ただ、こうした説明は国民にとって極めて分かりづらく、支援金制度への不信に拍車をかけた。  立民の鬼木誠氏は5日の参院本会議で、支援金制度に関する政府の説明について「仮定のもとでの詭弁(きべん)で、机上の空論にほかならない」と改めて批判した。  政府が唱える国民の「実質負担ゼロ」が実現するかは不透明だ。社会保障の歳出抑制については、具体的なメニューが定まらないまま。政府は国会審議で「毎年度の予算編成の中で影響を考慮しながら検討する」との答弁に終始し、高齢者やその家族に負担増がのしかかる懸念も残った。

◆根本的な解決策になっていない?

 支援金を財源とした施策では、児童手当に加え、保育サービスも拡充。親の就労の有無に関係なく預けられる「こども誰でも通園制度」などを設ける。ただ、保育士不足が常態化しており、現場からは不安の声も絶えない。野党からは「保育士の処遇改善など、根本的な問題解決に向けた対策こそ優先すべきだ」との指摘も上がった。  国民の伊藤孝恵氏は、少子化の要因を「実質賃金の低下や非正規雇用の増加、長時間労働の容認のみならず、性別役割分担意識や多様な性、家族の形を認めてこなかったことなど複合的だ」と指摘。政府が「今後の検討」にとどめている施策の評価指標の設定や効果検証の早期実現こそ重要だと訴えた。  関連法では、子育て世帯に限らず、大人に代わって日常的に家事や家族の世話をする「ヤングケアラー」の支援を初めて法制化する内容も盛り込まれた。国や自治体の支援対象として法律に明記することで、対応の強化を図る。 

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