上川陽子外相が16日に閣議報告した2024年版外交青書で、日中の「戦略的互恵関係」の記述が5年ぶりに復活した。中国の経済規模や軍事力が大きくなるのを踏まえ、衝突回避へ日中の安定的な関係維持を優先する。

外務省が毎年作成する外交青書の書きぶりは相手国への現状認識や向き合い方をあらわす。19年版以来消えていた戦略的互恵関係を再び記したのは経済と安全保障で対中リスクを低減する狙いがある。

06年に当時の安倍晋三首相が提起した戦略的互恵関係は政治と経済を両輪に、日中が共通の利益を目指す意味で用いられた。

今回は23年11月の日中首脳会談で岸田文雄首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席が戦略的互恵関係を再び確認したのを受け、解決困難な課題で対立を深めず関係を保つ意図がある。

24年版外交青書は日中間に「数多くの課題や懸案が存在する」と触れた。中国の軍事力強化を巡り「日本と国際社会の深刻な懸念事項であり、これまでにない最大の戦略的挑戦だ」との認識を強調した。

「『建設的かつ安定的な日中関係』を双方の努力で構築していくことが重要だ」と訴えた。

米大統領選など大型選挙が24年に相次ぐと指摘し「各国の内政と国際関係が相互に影響を及ぼし、国際情勢は重要な局面を迎える」と記載した。

主要7カ国(G7)や日米豪印の4カ国による「Quad(クアッド)」、日米韓などの同盟・同志国の枠組みの重要性が相対的に増していると明記した。

11日に初めて首脳会談を開いた日米比の枠組みについて「連携を一層強化し、協力の具体化を進めていく」と定義した。

学習院大の江藤名保子教授(中国政治)は「『戦略的』の意味は競争関係にはあるが、協力できる部分は協力するということだ。日本は中国との向き合い方でバランスをとり、対話を維持したいというのが今の状況だ」と分析した。

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