自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、自民が公明党と日本維新の会の主張を盛り込んでまとめた改正案が6日の衆院本会議で可決され、衆院を通過した。自民、公明、維新などが賛成した。パーティー券購入者の公開基準額の引き下げや、収支報告書の「確認書」交付の義務付けなどが柱。企業・団体献金禁止は盛り込まれず、政策活動費も温存される。不透明な「政治とカネ」に対する不信を払拭する抜本改正には至っていない。(近藤統義)

◆領収書の公開はなんと「10年後」

自民党が再提出した政治資金規正法を可決した衆院本会議

 改正案は7日からの参院審議を経て、今国会で成立する見通し。公明、維新との法案修正を主導した岸田文雄首相は衆院通過を受け、「明確な方向性を明らかにしたものだ。実効性がないとの指摘は当たらない」と官邸で記者団に述べた。  改正案には、政策活動費の廃止などを求める立憲民主、共産、国民民主の各党などが反対した。一方、立民が提出していた企業・団体献金の禁止法案は自民、公明、国民などの反対多数で否決された。  改正案は、パーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げる。政党が党幹部らに渡す政策活動費は大まかな項目ごとに月単位で収支報告書に記載し、領収書は10年後に公開する。支出をチェックする第三者機関も検討する。  政治家の責任強化については、収支報告書の「確認書」を会計責任者に交付するよう議員に義務付けた。不記載があり確認が不十分だった場合、公民権停止につながる罰金を科す。  採決に先立つ討論で、自民の山下貴司氏は「政治資金問題について党所属議員の一人として深くおわびする」と謝罪し「自民案は再発を防止するとともに、政治活動の自由と政治資金の透明性を確保する内容だ」と主張した。共産の塩川鉄也氏は「企業・団体献金を聖域とする自民案は国民の願いを裏切るもので断じて認められない」と反対した。

 派閥裏金事件 東京地検特捜部が捜査した政治資金規正法違反事件。自民党安倍派は、派閥パーティー券の販売ノルマを超えた利益を各議員にキックバック(還流)していた。派閥からの還付方式、議員がプールする留保方式の2ルートあり、2018〜22年に総額6億7654万円を政治資金収支報告書に記載せず裏金化した。二階派も同様に不記載があり、岸田派は派閥のみ不記載が判明。安倍派の池田佳隆衆院議員が逮捕され、2議員や3派の会計責任者らが立件された。

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◆真相解明も自らへの処分もなし

 【記者解説】生煮えで中途半端な政治資金規正法改正の自民党案が衆院を通過した。派閥の裏金事件で失墜した政治への信頼は回復するどころか、さらなる失望につながりかねない。

政治資金規正法改正案の衆院通過を受け、記者団の取材に応じる岸田首相

 岸田文雄首相(自民総裁)は昨年末の記者会見で「国民の信頼回復のため、火の玉となって取り組む」と語った。岸田派の解散、衆院政治倫理審査会への出席、規正法改正を巡る公明党と日本維新の会との党首会談など、首相が自ら動き、リーダーシップを発揮しようとした局面もある。  だが、その中身はどうか。事件の真相解明はいまだに果たされていない。責任追及では、安倍派議員を中心に処分をしながら、党のトップである自らへの処分は見送った。

◆「これから検討」繰り返すだけ

 再発防止のための規正法改正の検討過程では、抜本的な改革をなるべく避けようと小出しの修正を続けた。衆院政治改革特別委員会の答弁では「これから検討」ばかりを繰り返した。  衆院を通過した自民案は、政治不信の払拭につながるはずの政治資金の透明化が担保されたとはいえず、「令和の政治改革」との期待からは程遠い。

◆首相はどこ…採決直前まで現れず

 「火の玉になって国民の信頼を回復すると宣言された首相の姿が見えない」  6日の衆院本会議。自民案への反対討論に立った立憲民主党の西村智奈美氏は首相の姿を探した。首相は採決直前になって議場に登場したが、事件発覚以降、「火の玉」を体現する首相の姿は、国民には見えていない。 (井上峻輔) 

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