16日告示された衆院3補選で唯一、与野党の一騎打ちとなった島根1区補選。自民党が松江市の県庁前で開いた「出陣式」は、政治とカネで大きく揺れる党の現状を映し出すものとなった。

 元財務官僚の新顔、錦織功政氏(55)=公明党推薦=は第一声で、「選挙は大変厳しいものになる。これまで活動してきた中で、肌感覚で強く感じている」と強調。応援に駆けつけた小渕優子選挙対策委員長の演説は、裏金問題のおわびと反省の言葉から始まった。

  • 「弔い選の雰囲気、かけらもない」 重鎮不在、きしむ屈指の自民王国

 島根1区補選は、自民の細田博之前衆院議長の死去によるもの。島根は1996年の小選挙区比例代表並立制の導入以来、全ての小選挙区を自民候補が独占し、「自民党王国」とも呼ばれる。

「政治改革」訴えているのに……

 しかし自民は昨年末、細田氏がかつて率いた清和政策研究会(安倍派)などによる政治とカネの問題が発覚。本来なら追い風が吹く「弔い選」のはずだが、陣営幹部は「党の名前を出してもプラスにならない」と、不特定多数の有権者より、組織票固めに注力する。

 自民のベテラン県議は「ものすごい向かい風。錦織氏が政治改革にきちんと取り組むと訴えても、なかなか伝わらない」と危機感を募らせた。

政権への打撃の「天王山」 でも組織に課題も

 一方、立憲民主党は島根1区を「天王山」と位置づけ、攻勢を強める。

 「全国で唯一、裏金問題の後に行われる与野党対決の選挙だ。ここで勝てば、岸田政権に大打撃を食らわすことができる」。第一声で、立憲前職の亀井亜紀子氏(58)が訴えると、会場から大きな拍手がわいた。

 今回、国民民主党県連、社民党の支援に加え、共産党も候補者を取り下げて自主支援に回り、野党は候補者を一本化。亀井氏は、比例復活した2017年の衆院選以来の返り咲きを狙う。

 告示前から、泉健太代表や岡田克也幹事長ら党幹部が相次ぎ来県。山間地や島しょ部にも足を運び、無党派層への浸透を図っている。告示後は連合の芳野友子会長も現地入りする予定だ。

 ただ、課題となっているのは組織力だ。県選出の国会議員はおらず、実動部隊となる地方議員も自民に比べて大幅に少ない。立憲は「投票率をいかに上げていくかが、勝負の重要なポイント」(岡田幹事長)とみる。陣営幹部は、「僅差(きんさ)の勝負になる」と語った。(垣花昌弘、堀田浩一、菅原普)

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