与野党は12日、党首討論を19日に開催すると合意した。開催は3年ぶりで岸田文雄政権下では初となる。立憲民主党の泉健太代表は首相の「政治とカネ」への対応が不十分として、国民の信を問うべきだと主張し衆院解散を求める見通しだ。
泉氏はかねて自民党派閥の政治資金問題を踏まえた議員の処分や、政治資金規正法改正案に関し首相の政治改革の姿勢が不十分だと指摘してきた。党首討論でトップの責任を追及する。
泉氏以外に日本維新の会の馬場伸幸代表、共産党の田村智子委員長、国民民主党の玉木雄一郎代表が参加する見通しだ。2018年6月の党首討論と同様、過去最多5人の党首が討論することになる。
党首討論は2000年の国会改革の目玉として英国議会をモデルに導入された。「QT(クエスチョン・タイム)」とも呼ばれる。与野党の党首が一対一で大局的な議論を交わす機会とされてきた。予算委などの答弁と異なり、首相が「質問返し」もできる。
短時間でも野党が党首討論の開催を要求したのは、政治とカネの問題による衆院解散を巡る発言を引き出す狙いがある。念頭にあるのが民主党政権下での一場面だ。
12年11月の党首討論で自民党の安倍晋三総裁が野田佳彦首相と対峙した。安倍氏に迫られ、議員定数削減の確約を条件に「衆院を解散してもいい」と言い切り、解散する日を明示した。
立民は自民党の政治とカネの問題で勢いを増す。4月の衆院3補欠選挙で全勝し、地方選挙でも躍進する。泉氏は早期の解散を求め続けている。首相が解散を表明しない場合、党首討論後に内閣不信任決議案を提出する理屈に使うことができる。
自民党は国会論戦で野党の追及を受けてきた。党首討論であればむしろ短時間で済み、首相の失点を抑えられるとの思惑がある。規正法の改正などで紛糾した今国会の「締めくくり」として、1つの区切りになるとの見方もある。
今後の党首討論のあり方も議論になりそうだ。導入当初は年8回開催されたが、徐々に回数が減り、年1〜2回にとどまった。菅義偉政権で立民の枝野幸男氏らが参加した21年6月を最後に開催されてこなかった。
英国は二大政党制だが、日本では野党が乱立しているため、全体で原則45分間の持ち時間が短く「見せ場」が少ない。今回、立民の安住淳国会対策委員長は1時間程度に延長するよう要求している。
18年には枝野氏が討論終了後に「意味のないことをダラダラと話す首相を相手に、党首討論という制度はほとんど歴史的意味は終えた」と主張した。
維新などは23年の臨時国会で党首討論を所管する国家基本政策委員会を廃止する法案を提出した。同委を担当する部署の人件費などで2年半で3億円以上の税金が使われたと批判した。
国家基本政策委で開催を決議しても、実現に至らない場合もあった。09年の臨時国会で民主党は党首討論の開催を求める自民党の要求に「審議日程が足りない」などの理由で応じなかった。
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