東京都知事選(20日告示―7月7日投開票)は50人を超える人が立候補を準備している。ポスターやインターネットの活用など選挙運動や公職選挙法のあり方を問う議論が起きている。「劇場型」の選挙は妨害のような事態も懸念される。

都知事選は近年、立候補者が増加傾向にある。前回2020年は22人が立候補した。今回は50人以上が選挙管理委員会の事前審査を終えた。

政治団体「NHKから国民を守る党」は20人超の擁立を発表している。同団体のホームページは一定額を寄付することで街中の選挙ポスターの掲示板に「自分でつくったポスター」を貼ることができると呼びかける。

東京都知事選のポスター掲示板

同団体はアイデアは合法だと主張する。都選管によると、原則としてポスターの記載内容は自由だという。

大量の立候補は想定されておらず、各区市町村の選管は新たな掲示板をつくるなどの対応を迫られる可能性がある。候補者の情報が載った「選挙公報」や、公約を訴える政見放送も対処が必要になる。

公職の選挙に立候補するには供託金をいったん支払わなければならない。都知事選の供託金は300万円で、得票が1割に届かなかった場合は没収となる。当選する意思のない人の出馬を防ぐ。

「売名」が目的の候補者にとって都知事選は格好の場となる。供託金300万円を没収されても、NHKなどの政見放送への出演はテレビCMに匹敵する自己宣伝の効果をもつという見方がある。

政見放送は候補者1人あたり5分30秒以内だ。仮に50人規模の候補者が出馬した場合、すべての候補者の放送を見ようとするなら単純計算で4時間程度かかる。

衆院選は無所属候補は政見放送ができない。都知事選は可能になる。

売名行為の問題を巡り、東北大の河村和徳准教授は「規制を強化するだけでは選挙の自由を縛ることになる」と話す。候補者の紹介や選挙公報についてネット活用を進めるべきだと提起する。

13年の参院選から解禁されたホームページなどを使うネット選挙で悪用の事例があった。

24年4月の衆院3補欠選挙で、政治団体「つばさの党」は他陣営の街頭演説会場で拡声器を使って大声を張り上げるなどした。演説中止に追い込まれる陣営も出た。同団体のメンバーは公選法違反(自由妨害)で起訴された。

同団体はその様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信した。河村氏は「このような利用のされ方は想定されていない。ネット選挙や公選法の限界を示した」と指摘する。

日本維新の会と国民民主党、教育無償化を実現する会は18日、自由妨害罪の法定刑の引き上げなどを盛り込んだ公選法改正案を衆院に提出した。衆院補選での選挙妨害を問題視した。

維新の音喜多駿政調会長は法案提出後、国会内で記者団に「街頭演説が行えないほど窮地に陥った。類似犯が出ないとも限らない」と訴えた。

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