◆「約束を破られた」維新は反対へ
参院政治改革特別委で答弁する岸田首相=18日、千葉一成撮影
日本維新の会は、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革で、自民に約束をほごにされたと反発。衆院での賛成から一転して反対に回り、岸田文雄首相に対する問責決議案を参院に提出した。改正案は、19日に開かれる参院本会議で成立する見通し。 改正案は、政治資金パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げるほか、国会議員らに対し、収支報告書の「確認書」交付を義務付ける。立民などが禁止を求めた企業・団体献金の見直しは行われず、政策活動費の10年後の領収書公開や、政治資金を監査する第三者機関の設置、立件時の政党交付金の減額措置など多くが検討事項として先送りされた。 立民の小沼巧氏は、討論で「何が正しくて何がだめなのか、判断すら示されない案は、もはや法案としての体をなしていない」と反対を表明。自民の石井浩郎氏は「わが党は二度と同様の事態を起こさないという強い覚悟で、実効性の高い再発防止策をとりまとめた」と主張した。 ◇ ◇◆信頼回復を目指したはずが
日本維新の会の役員会後、記者会見する馬場代表=18日、千葉一成撮影
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で失った政治への信頼回復を目指したはずの政治資金規正法改正案の審議は、衆参両院を合わせても27時間弱にとどまった。抜け穴だらけの小手先の見直しでは、透明性の向上や政治不信の払拭には結び付かなかった。先送りされた課題はあまりに多く、政治とカネの問題の抜本解決はまたしても遠のいた。(井上峻輔) 「なぜこんなに欠陥だらけの法案の成立をこれほど急がないといけないのか」。立憲民主党の小沼巧氏は18日、参院政治改革特別委員会で、岸田文雄首相の拙速な対応を批判した。◆領収書公開は10年も先
自民案は不十分、不明瞭な内容が目立つ。政党から党幹部らに支給される「政策活動費」はブラックボックスと批判されてきたが、領収書の公開は10年後。最終的な支払先がどの程度公開されるかも、衆参の審議で明確にならなかった。 自民側は、改正法が施行される2026年1月までの制度設計を「目指す」という答弁に終始。不正をただす第三者機関の具体像は不明のまま。企業・団体献金の見直しも手つかずだ。◆「賛成」取り付けのため生煮え
17日、衆院決算行政監視委で質問する立憲民主党の野田佳彦元首相=千葉一成撮影
自民が各党から遅れて独自案をまとめたのは4月末で、公明党と協議して改正案を国会提出したのは会期が残り約1カ月となった5月17日。生煮えの項目が多いのは、公明や日本維新の会の賛成を得るために衆院採決直前にドタバタの修正作業で盛り込んだためだ。 立民の野田佳彦元首相は17日の衆院決算行政監視委員会で「自民がぐずぐずしすぎたことが十分な審議ができなかった最大の理由だ」と喝破した。◆積み残し、議論の場さえ決まらず
政治資金規正法改正案で先送りされた主な検討課題
また、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)に関しては、自民は5月31日に「使途公開と残金返納を義務付ける立法措置を講ずる」ことで維新と合意したのに「日程的に厳しい」と改革を先送り。自民の不誠実な対応に維新は「うそつき内閣」と反発し、参院で反対に転じた。 積み残された課題は今後の与野党協議に委ねられるが、議論の場さえ決まらず、再びたなざらしにされかねない。自民からは「国会が閉じれば政治とカネの問題は消える」(中堅議員)と幕引きをもくろむ声も聞かれるが、中途半端な法改正が国民の政治不信をさらに高めるのは間違いない。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。