岸田文雄首相は19日、首相官邸でニュージーランド(NZ)のラクソン首相と会談する。部隊の運用計画やテロ情勢といった機密情報を共有しやすくする「情報保護協定」の締結で合意する見通し。中国の海洋進出などを念頭に、インド太平洋地域で安全保障協力を強化する。

岸田首相とラクソン氏の会談は初めて。ラクソン氏は2023年10月の総選挙で中道右派の国民党を率いて当時の与党・労働党に勝利し、首相に就いたばかりだ。両首脳は会談後に共同記者発表を開き、成果をまとめた文書の発出を予定する。

締結で合意予定の情報保護協定は、相手国から提供された軍事機密などを、事前の承認なく第三国に提供することや目的外に使用することを禁止する。2国間で安保に関する機密情報の交換を円滑にする狙いがある。

日本はこれまで米国、オーストラリア、インド、韓国、北大西洋条約機構(NATO)など、9カ国・機関と情報保護協定を締結している。ウクライナとも今年2月に交渉開始で合意しており、2国間の協力を深めるための基盤となる。

NZは英語圏5カ国による機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」に参加している。日本は同枠組みのなかで、米国、豪州、英国との間で情報保護協定を発効済みで、カナダとも交渉を進めている。NZとも合意に至れば、ファイブ・アイズとより緊密な連携をとれるようになる。

情報保護協定をもとに、中国のサイバー攻撃に関する情報や、インド太平洋での中国軍の動きなどの情報を共有するとみられる。NZは23年に同国で初の国家安全保障戦略を策定し、国防力を強化すると記した。「中国がますます強硬になり、既存の国際規範に意欲的に挑戦するようになった」と指摘した。

ラクソン氏は日本訪問に先立ち、13日にNZで中国の李強(リー・チャン)首相と会談した。李氏はNZが米英豪の安保枠組み「AUKUS(オーカス)」への参加を検討していることに懸念を表明したという。

首脳会談では経済関係でも意見を交わす。サプライチェーン(供給網)の維持・強化に向けた連携も確かめる。ラクソン政権は左派の前労働党政権の政策から転換し、ビジネス重視の姿勢を鮮明にしている。

NZにとって日本は中国、豪州、米国に次ぐ第4位の貿易相手国で、乳製品やアルミニウム、果実類を輸出している。日本からは自動車など輸送用機器や鉱物性燃料を輸入している。ともに包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)の加盟国だ。

7月に東京で開催する予定の日本と太平洋の島しょ国・地域による「第10回太平洋・島サミット」に向けた協調も確認する。NZは歴史的に密接な関係を築いてきた太平洋島しょ国での、中国の台頭に懸念を持つ。

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