1月に召集された第213通常国会は、23日会期末を前に21日、衆参両院の本会議で閉会の手続きなどが行われ、事実上閉会しました。
この国会は自民党の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて政治改革が最大の焦点となり、最終盤に改正政治資金規正法が成立しました。
改正法では「政策活動費」の支出をチェックする第三者機関の制度設計などは「検討事項」となっており、今後、実効性のある仕組みを設けられるかが引き続き課題となります。
法改正をめぐる一連の議論で立憲民主党は政権への批判を強め、岸田内閣は政治改革に後ろ向きで直ちに総辞職するか衆議院を解散すべきだとして、20日内閣不信任決議案を提出し、自民・公明両党はこれを反対多数で否決しました。
日本維新の会が参議院に提出した岸田総理大臣に対する問責決議案は審議が行われないまま廃案になる見通しです。
さらに党首討論が3年ぶりに開催され、立憲民主党の泉代表をはじめ野党の党首が衆議院の解散や内閣総辞職を求めたのに対し、岸田総理大臣は政治の信頼回復に努め先送りできない課題に取り組み結果を出していくと強調しました。
一方、政府が提出した62の法案は、1つをのぞいて成立し、成立率は98%になりました。
成立した法律は離婚後も父と母双方が子どもの親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした改正民法や子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度「日本版DBS」を導入するための法律などが含まれます。
憲法論議では、自民党が大規模災害など緊急事態への対応について憲法改正の条文案の作成に入りたいと繰り返し提案したのに対し、立憲民主党は慎重な姿勢を示し、与野党の間で引き続き意見が交わされる見込みです。
自民 茂木幹事長「重要課題1つずつ解決で国民の信頼回復に」
自民党の茂木幹事長は国会が事実上閉会したことを受けてコメントを発表し、「各党の提案の中でも取り入れられるものはできる限り取り入れる形で改正政治資金規正法を成立させることができた。今後、再発防止の徹底や政治資金の透明性の確保に誠心誠意、取り組んでいく。物価高対策や少子化対策などの重要課題を1つずつ解決していくことで国民の信頼回復に努めていく」としています。
自民 森山総務会長「政治資金の問題は国民への説明が大事」
自民党の森山総務会長は記者会見で「今年度予算や子ども・子育て支援法などの改正法といった重要な法案を成立させることができた。去年から議論が続く政治資金の問題についても各党の意見をしっかり取り入れる形で成案を得たのは何よりだ」と述べました。
そのうえで「政治資金の問題は国民への説明が大事だ。わが党は結党以来国民政党として活動しており、それを地道に続けていくことが大事だ」と述べました。
自民 渡海政務調査会長「政治改革が最大の焦点 一定の成果」
自民党の渡海政務調査会長は記者団に対し「政治改革が最大の焦点だったが、一定の成果を得たと思っている。これで終わりではなく各党とも協議しながらしっかりと残された課題に取り組んでいく」と述べました。
立民 泉代表「期待できる人物がいない 国民に見えたのでは」
立憲民主党の泉代表は記者会見で「自民党によって大迷惑を被ったのが今国会だ。本来なら自民党みずからが解明すべき『裏金問題』なのに自浄作用を働かせることなく、国会でほかの党が延々と質問をさせられた。少子化対策も教育無償化も農業などももっと議論したかった」と述べました。
そのうえで「きのうは内閣不信任決議案を提出し、自民党内に良識派がいると期待したが、誰ひとりいなかった。日頃、自民党内で『いまの政治ではダメだ』などと言っている人も、結局、あの中身のない改正政治資金規正法を成立させ、不信任決議案も一糸乱れず反対して現状維持となった。今の自民党に期待できる人物がいないことも国民に見えたのではないか」と述べました。
維新 馬場代表「自民党は一刻も早く改革のロードマップを」
日本維新の会の馬場代表は、記者会見で「政治とカネの問題ばかりに振り回された国会だった。国内外には重要な課題が山積しており、国会で議論していくことが必要で、秋の臨時国会からは、本来の立法府の仕事を行うべきだ。そのためにも、自民党は一刻も早く、改革のロードマップを歩んでもらいたい」と述べました。
また、みずからが幹事を務める衆議院憲法審査会での憲法改正に向けた議論について「国会の閉会中は、議論の障害となる法案や予算案がなく、絶好のチャンスだ。今度こそ自民党は本気になり、どんどん審査をすべきだ。この期間を夏休みにしていることは到底、国民の理解は得られない」と述べました。
日本維新の会は、国会の閉会にあたって慣例となっている総理大臣のあいさつ回りを受けませんでした。
これについて、馬場代表は記者会見で「総理大臣は非常に多忙なので、儀礼的なことをやっている暇があるなら、本来の仕事を片付けてほしい。同じ顔をつきあわせて、社交辞令を述べても生産性はなく、『タイムイズマネー』で時間がもったいないと考え、お断りした。今後もお断りし続ける」と述べました。
ただ、党内からは、自民党との党首間の合意に盛り込まれていた、「調査研究広報滞在費」の使いみちの公開などを義務づける立法措置について、党が求めた今の国会での実現が果たされなかったことからあいさつを受けなかったのではないかという見方が出ています。
維新 遠藤国対委員長 衆院議院運営委 山口委員長と面会
また日本維新の会の遠藤国会対策委員長は、衆議院議院運営委員会の山口委員長と面会し、国会議員に毎月支給される「調査研究広報滞在費」の使いみちの公開などに向けて、閉会後も委員会で議論を行うよう要請しました。
これに対し、山口委員長は「委員会で決めたとおりに進めていく」などと応じたということです。「調査研究広報滞在費」の使いみちの公開などをめぐって、山口委員長はこれまでに参議院側とも調整しながら大島元議長などから意見を聴き取る考えを示しています。面会のあと遠藤氏は、記者団に対し「山口委員長には尽力してもらっていて、ありがたいと思っている。岸田総理大臣も汗をかいてもらいたい」と述べました。
国民 玉木代表「納税者の立場に立った政策や政治を実現」
国民民主党の玉木代表は党の両院議員総会で「政治とカネの問題に多くの時間が取られた。憲法改正の議論も進まず、皇位の安定継承についても、結論を得ることができず、大変悔しい思いをした国会だった。われわれの影響力をもっと増やすことが、日本の国益にかなうと確信したので、党勢を拡大していくため努力する。国民目線で、生活者や働く者、それに納税者の立場に立った政策や政治を実現する」と述べました。
共産 田村委員長「自民党政治終わらせ 下野させなければ」
共産党の田村委員長は記者団に対し「岸田政権と自民党政治が本当に国民から見放される状況になった通常国会だった。『裏金事件』の追及で、野党が一致して自民党に迫っていったことは非常に重要だった。ここまでダメな自民党政治を終わらせ、下野させなければいけないことが明らかになっている。引き続き、国会の中で、大いに野党が力を合わせて頑張っていきたい」と述べました。
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