東京都知事選で、立憲民主、共産両党が「最強の候補」との期待をかけて共同擁立した蓮舫氏。7日の投開票日に実施した東京新聞の出口調査では、小池百合子氏に大きく離され、石丸伸二氏にもリードを奪われ、「2位」も難しい状況だ。出口調査や取材で浮かんだ「敗因」は、いったい何だったのか。(原田遼)

◆少子化対策でも小池氏と差別化を図ったが…

 蓮舫氏は7日午後8時20分ごろ、目に涙をためて取材に応じた。  言葉は気丈だった。報道陣から敗因を問われると「私の力不足、そこに尽きると思います」と笑顔を浮かべた。有権者の反応については「本当に熱いものもありました」と振り返り、「楽しい闘いでした」と語った。声はしゃがれていた。

演説する蓮舫氏

 「裏金問題など自民党の国政に不満を抱く有権者を取り込む」。蓮舫氏の陣営関係者は当初描いていたイメージを打ち明ける。  実際に蓮舫氏は、自民党から支援を受ける現職の小池百合子氏の姿勢や、明治神宮外苑再開発に代表される不透明な都政の意思決定を「ブラックボックス」と徹底して批判し続けた。  公約や演説でも「若者の徹底支援」や、結婚にこだわらない多様な社会づくりを訴え、婚活事業を中心とする都の少子化対策と差別化を図った。

◆盛況だった街頭演説、集まったのは支持者ばかり?

 街頭演説は当初、平日は1日1回に限定し新宿、渋谷、立川など主要駅前に多くの人を集める戦略をとった。交流サイト(SNS)を通じ、盛況を外部にアピール。実際にどこの会場も聴衆であふれ、「地元にこんなに人が集まったのは初めて」という声が相次いだ。  しかし、裏金問題を巡る主張は、小池氏が自民色を出さない戦略を展開したことで空回りした。幅広い分野にわたる都政批判は、政策に通じていると印象づける反面、焦点がぼやけた面も感じられた。  街頭演説を見に来たものの途中で会場を去った大学生は「難しい話が多く、よく分からなかった。若者支援をするなら、若者に身近な話をしてほしかった」と残念がっていた。  この大学生の言葉と行動は、本紙の出口調査の結果とも重なる。蓮舫氏は若者支援を訴えたにもかかわらず、調査結果によると、40代以下の有権者の支持を得られなかった。支持をがっちりつかもうと狙った年齢層は、石丸氏に流れた。

◆「テレビ討論会が開催されない」といら立ち

 小池氏と直接「対決」する機会が少なかったことも想定外だった。  陣営幹部は「蓮舫さんは国会屈指の論客。テレビの公開討論会があれば勝つはずだが、小池陣営が出演を断っているのか、開催されない」ともどかしさを口にした。蓮舫氏自身、選挙戦終盤に「(小池氏と交渉する)努力をしたのか」とメディアに当たり、いら立ちを隠さなかった。  選挙戦中盤、報道機関による情勢調査で不利が伝えられ、陣営幹部は「街頭は盛り上がっているのになぜ」と首をひねった。しかし、ある都議は「集まるのはもともとの支持者ばかり。内側を固めているだけで、小池さんと同じやり方だ。外側に支持を広げるには遊説の回数を増やさないと。石丸氏はそれをやっているから伸びている」と問題点を指摘した。だが、時すでに遅し。戦略を見直す時間はなかった。

◆立民・共産との連携は奏功した?

 立民、共産両党の連携もプラスばかりとは限らなかった。演説の応援は古巣の立民幹部がほとんどだったが、一部で共産の幹部も参加し、蓮舫氏の公約にはない独自の訴えを主張する場面もあった。  無党派層の取り込みについて、蓮舫氏は「こだわりはなかった。支持政党で線引きをせず、全都民に提言した」と振り返ったが、ある都議は「無党派層は極端な思想を嫌う。共産と組んだことで敬遠されたのではないか。無党派層や自民に嫌気を感じる保守層を取り込むであれば、そっちにも刺さるような戦略が必要だった」と悔やんだ。

◆「内向きの発信にとどまった」

 終盤戦では、商店街の練り歩きや街宣車での活動を増やし、アーティストのコムアイさんら著名な若者とインスタグラムで対談をするなどてこ入れをしたが、巻き返すことはできなかった。  陣営関係者は7日夜、「想像していたよりも蓮舫さんを良く思わない都民が多かった。街頭演説もSNSも盛り上がったが、内向きの発信にとどまった」と肩を落とした。 

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