東京都知事選は「現職負けなし」の歴史が維持された。7日投開票された都知事選で、現職の小池百合子氏は3選を確実にした。自民、公明両党などの支援を受けながらも表向きは政党色を極力薄める巧みな選挙戦を展開。東京新聞の出口調査によると、支持する政党がない有権者を含め幅広い層に浸透した。勝因を探ると、見えてきたキーワードは「舞台」だ。(渡辺真由子)

◆政策の現場を訪れ「公務」アピール AIゆりこの人気は…

 「公務を優先する」。今回の小池氏の選挙戦を象徴する言葉だ。

街頭演説で支持を訴える小池百合子氏=6月30日、布藤哲矢撮影

 6月20日の告示日は街頭演説に立たず、その後も街頭は週末が中心で、都民の前での訴えは控えめだった。代わりに積極的に実施したのが、都の施設や民間事例を見て回る「行政視察」だった。  奥多摩湖のダムや八王子市学校給食センター、民間の介護研修施設などなど、選挙期間中に20カ所近くを相次いで訪問し、1日に4カ所巡ることもあった。視察先は、防災や子育て施策など、2期8年の任期中に力を入れた政策に関連する場所が多く、現職としての仕事ぶりをアピールする「舞台」ばかりだった。  公務中の小池氏に代わって有権者に訴えたのは、人工知能(AI)で表情と声を学ばせた「AIゆりこ」。X(旧ツイッター)に投稿されたAIゆりこ動画は再生回数が1万回超だった。

◆「争点ではありません」 蓮舫氏の仕掛けに乗らず

 有力な対抗馬とみられた前参院議員の蓮舫氏(56)との対決については、「同じ舞台に上がらない」(都民ファーストの会幹部)との戦略を貫いた。  まず意識したとみられるのが、立候補表明の時期だ。複数の都政関係者によると小池氏は当初、5月29日の都議会開会日に表明する方向で調整していたとされる。しかし、27日に蓮舫氏が出馬を正式に表明。結局小池氏は29日には表明せず6月12日の閉会日にずれ込んだ。小池氏周辺は「タイミングをずらす狙いもあったのでは」と打ち明ける。  告示日前日の6月19日に主要立候補予定者が招かれた共同記者会見では、明治神宮外苑の再開発問題について争点化をアピールした蓮舫氏に対し、「争点ではありません」とさりげなく一蹴。相手の仕掛けに乗るまいとする意識を強くにじませた。

◆支援に回った自民、公明は目立たせず 「地元首長」の力を借りて

 蓮舫氏との違いは、政党の具体的な支援体制にも表れた。小池氏は自公や国民民主党、都民ファーストの会の、蓮舫氏は立憲民主、共産、社民各党の支援をそれぞれ受けた。  しかし、立民、共産両党の国会議員が応援演説に連日登場した蓮舫氏陣営に対し、「党派色を出さない」戦略を徹底する小池氏陣営は自公両党の議員らを応援弁士に招くことはなく、地元の首長らにとどめた。  中盤以降、各種情勢調査で優勢が伝えられたが、逆に「本人のギアが入ってきた」(都民ファ幹部)。前半戦はなかった平日公務後の街頭演説も連日展開し、蓮舫氏を寄せ付けない強さを見せつけた。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。