<政治とカネ考・残された課題>  改正政治資金規正法が6月19日に成立してから1カ月弱。自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で政治家の自浄作用が問われたが、法改正は抜本改革には程遠く、抜け穴が目立つ。国会閉会後、先送りされた検討項目を議論する動きが鈍い中、積み残しにされた課題を掘り下げる。

◆本質からかけ離れた議論に終始

 政治資金パーティー券の購入者の公開基準は「10万円超」にすべきか「5万円超」か。自民党派閥の裏金事件を受け、自民、公明両党の与党協議で一番の争点になったのは、政治とカネの問題の本質とはかけ離れた議論だった。最終的に「5万円超」で合意したが、カネ集めに執着する政治家の姿が浮かび上がった。

2023年12月23日、自民党の大塚拓衆院議員が開いた政治資金パーティー。所属する安倍派が、裏金事件で東京地検の家宅捜索を受けたばかりだった。(一部画像処理)

 政治資金収支報告書に氏名などが記載、公開されるのは、法改正前は20万円超の購入者に限られていた。実際は基準以下の購入が多く、誰がどれだけ買ったかはほとんど分からない。

◆「切りがいいから」10万円案

 裏金事件を受けて透明化の徹底が叫ばれたが、自民は当初「10万円超」を主張し、大幅な引き下げに抵抗した。購入を知られたくない企業や個人は多く、党内からパーティー券を売るのが難しくなるとの批判が相次いだためだ。  「10万円超」に合理的な理由はなく、国会審議では自民議員が「切りが良いから」と説明。公明は通常の寄付と同じ公開基準の「5万円超」を訴え、最終的に岸田文雄首相の判断で公明の主張を受け入れた。  だが、開催回数を増やして5万円以下で繰り返し購入してもらえば今後も非公開を維持できるなど「抜け穴」は残ったまま。基準引き下げは法施行の1年後とされ、それまでに開催して蓄財することも可能だ。

◆「政治にはカネがかかる」を言い訳に

 そもそも政治資金パーティーは、形を変えた企業・団体献金になっていることが問題だったはずだ。野党は企業・団体のパーティー券購入禁止やパーティーそのものの禁止を訴えたが、今回の法改正ではいずれも実現しなかった。  今も一部の議員はパーティーを続ける。自民の閣僚経験者は「秘書の人件費のためにもパーティーは開かないといけない。政治に金はかかるものだ」と強弁している。(井上峻輔) 

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