<政治とカネ考・残された課題>  「秘書に任せていて知らなかった」。政治とカネの問題が発覚するたびに繰り返されてきた国会議員の言い訳は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件でも同様だった。責任をなすりつけられるのは秘書で、議員は知らぬ存ぜぬ。この構図は今回の法改正で終止符が打たれるのだろうか。

◆議員が罪に問われるのは会計責任者の処罰が前提

 秘書だけが罪をかぶることになるのは、政治資金収支報告書の作成や提出を義務付けられている「会計責任者」を、ほとんどのケースで秘書が担っているからだ。収支報告書に不記載や虚偽記載があっても、議員が罪に問われるのは共謀が認められた場合や、会計責任者の「選任」と「監督」の両方で相当の注意を怠った場合に限られる。その基準も明確ではない。  そこで、法改正により導入されたのが「確認書」制度。収支報告書が適正に作成されたと確認したことを示す文書の交付を議員に義務付ける。その確認書は、会計責任者が収支報告書の提出時に添付。不記載や虚偽記載で会計責任者が処罰を受けた際、確認が不十分だった場合は議員にも50万円以下の罰金が科され、公民権停止になる仕組みだ。

◆議員80人以上の不記載が判明、でも立件された会計責任者わずか4人

 ただ、議員が罪に問われるのは会計責任者の処罰が前提だ。そもそも今回の裏金事件で80人以上の議員の不記載が判明したが、会計責任者が立件されたのはわずか4人だけだった。  法改正の狙いは「知らなかった」という言い訳をできなくすることだが、既に確認書の実効性には疑問符が付いている。「確認したが気付かなかった」などと言い逃れをする余地もあるためだ。  違法行為への関与の有無に関係なく議員が当選無効となる公職選挙法の「連座制」を念頭に置いた議論もあったが、会計責任者だけが罪に問われやすい状況は変わらなかった。(井上峻輔) 

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