6月から始まった定額減税で、1人で2人分の減税効果(8万円)を受けられる「二重取り」の例があることが明らかとなった。鈴木俊一財務相は12日の会見で、「企業や地方自治体の事務負担に配慮することも必要だ」として、やむを得ないとの考えを示した。岸田政権の看板政策は、減税と給付の組み合わせで事務が複雑となり、不公平を生んだとの指摘が出ている。(市川千晴)

◆年収100万~103万円の妻は計8万円の減税効果

 二重取りの例は、世帯主の夫の扶養に入る妻が、パートタイムで働き年収が100万円超から103万円以下で、所得税は納税しないが、住民税を支払う場合に起きる。まず、自身については、住民税の減税しきれない分と、所得税の3万円分を合わせて4万円の減税効果(給付分を含む)を受けられる。  さらに、扶養に入っているので、夫の税金から妻の分として4万円の減税を受けられる。自身で受ける分と合わせると、妻1人で計8万円の効果となる。

◆そもそも仕組みが複雑、企業や自治体の負担が大

 政府は二重取りを例外とするが、第一生命経済研究所の熊野英生氏によると、所得税が生じない103万円の壁を意識し、労働時間を調整して働く人は少なくないという。そのため、二重取りの件数は少なくないとみる。

閣議に臨む鈴木財務相=12日、首相官邸で(佐藤哲紀撮影)

 鈴木氏は会見で、二重取りを防ごうとすると、住民税の情報を網羅的に把握するなど、企業や自治体の事務負担がさらに膨大になると説明した。総務省によると返還の仕組みはなく、その必要もない。  熊野氏は「今回の減税は企業や自治体の負担が大きく不評な政策だ。二重取りを容認するようでは不満がさらに膨らみかねない」と指摘する。 

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