<政治とカネ考・残された課題>  自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件にかかわった国会議員への追及が続いた通常国会では、自民幹部らが政治資金の公開基準の緩い自らの後援会に資金を移し替え、最終的な使い道をうやむやにする問題が次々と明らかになった。

◆鉛筆など「消耗品」に1270万円?

 筆頭格は茂木敏充幹事長で、2022年までの10年間で自身の資金管理団体から後援会組織に約3億2000万円を寄付。新藤義孝経済再生担当相も、秘書が会計責任者を務める政党支部から後援会に約2億6000万円を寄付していた。

自民党の茂木敏充幹事長

 後援会の場合、資金管理団体や政党支部とは異なり、経常経費の支出明細を公開する義務は課せられていなかった。例えば新藤氏の後援会は22年、鉛筆や封筒などを指す「備品・消耗品費」に約1270万円もの巨費を充てたが、政治資金収支報告書には総額が記載されるだけで、個別の支出先は分からなかった。  同じような資金移動は、小泉龍司法相や棚橋泰文元国家公安委員長らにも発覚した。いずれも違法ではないものの、野党からは「なぜわざわざ公開基準の緩い後援会に付け替えるのか」「政治資金を国民の監視下に置くという政治資金規正法の趣旨から懸け離れている」などと批判が浴びせられた。

◆「1000万円以上」は公開が義務化されたが

 公開基準の厳格化を求める声が強まった結果、後援会が政党支部などから年1000万円以上の寄付を受けた場合、その年と翌年は1件1万円超の支出明細を収支報告書に記載することなどが改正法で義務化された。  26年1月から施行される予定だが、複数の後援会に分散して移し替え、単体への寄付が1000万円以上にならないようにすれば、公開義務から逃れる「抜け穴」が早くも問題視されている。「支出の中身は事実上明らかにならない」(立憲民主党の岡田克也幹事長)との懸念が高まっている。(我那覇圭) 

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