航空自衛隊とドイツ、フランス、スペイン空軍による共同訓練が19日、日本の周辺空域で始まる。各国の主力戦闘機が参加して部隊間の連携を確認する。欧州の国によるインド太平洋地域への部隊の派遣は増える傾向にあり、中国・ロシアへの抑止力を高める狙いがある。
3カ国の空軍は合同部隊を編成し、世界各地で展開する実動演習「パシフィック・スカイズ24」に参加している。米アラスカで米軍と訓練した後に日本を訪れる。
北海道の千歳基地の周辺空域で自衛隊とドイツ軍・スペイン軍、茨城県の百里基地の周りでは、自衛隊とフランス軍がそれぞれ共同訓練する。
ドイツとスペインは主力戦闘機「ユーロファイター・タイフーン」を計12機出す。空自からは「F15」戦闘機が4機参加する。スペインが日本に戦闘機を送るのは初めてで、ドイツも2022年以来、2度目となる。
日仏訓練にはフランスの「ラファール」戦闘機が4機、空自は「F2」戦闘機が2機加わる。
共同訓練ではあらゆる事態を想定して部隊間の意思疎通が円滑にできるか確かめる。
欧州の国が自衛隊と日本周辺で訓練するのは、中国やロシアへの警戒の高まりが背景にある。ロシアによるウクライナ侵略の影響に加え、対中国では国際航路の安全が脅かされたり、重要物資の供給が途絶したりするリスクへの認識が広がっている。
21年に英国の空母打撃群、フランスの強襲揚陸艦、ドイツのフリゲート艦が立て続けに日本周辺に展開したのを契機に、共同訓練の機会が増えた。
今年はこれまでにトルコやオランダの艦船が寄港したほか、8月下旬にはイタリア海軍の軽空母やドイツ海軍のフリゲート艦の来日も予定する。
日本にとって欧州との部隊協力は抑止力の向上につながる。同盟国の米国に加え欧州と関係を強めることで、米欧が地理的に離れていてもアジアの安保に関与する姿勢を見せられる。海のほか空でも共同訓練を増やし領域をまたいだ協力を強化する。
対欧州では、自衛隊と相手国の軍が互いの国を訪問して訓練しやすくする「円滑化協定(RAA)」を英国と締結し、フランスとも交渉中だ。英仏独とはそれぞれ部隊間で燃料などを融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」を発効している。
中ロはウクライナ侵略後、2国間の軍事協力を深めている。23年12月には中ロの爆撃機4機が日本周辺を長距離にわたって共同飛行した。今月も両国の艦艇が九州と種子島・屋久島の間にある大隅海峡を通過したほか、南シナ海では共同訓練に臨んだ。
筑波大の東野篤子教授は日本と欧州の共同訓練を評価する。岸田文雄首相が3年連続で北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席したことに触れ「欧州各国も1カ国単位でなく、まとまって協力していきたいあらわれだ」と話した。
中国とロシアを念頭に「欧州とインド太平洋地域の双方で一定程度の脅威がある」と指摘し「有事に欧州と日本で相互に支援する必要がある」と強調した。
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