顧客からの暴言や理不尽な要求などの迷惑行為「カスタマーハラスメント」(カスハラ)の防止条例制定を目指す東京都は19日、9月に開会する都議会定例会に条例案を提出する方針を明らかにした。同日公表した条例の基本的な考え方では、カスハラを明確に禁止し、顧客には防止に向けた「責務」を課した。成立すれば全国初となる。

会見でカスハラ条例案について説明する東京都の小池百合子知事

 小池百合子知事は同日の定例記者会見で「社会全体でカスハラを防止し、全ての人が対等の立場から互いに尊重し合うことが趣旨。都内で安心して働くことのできる環境を確立したい」と述べた。

◆顧客に「言動に注意を払う義務」

 条例の基本的な考え方では、カスハラを「顧客などから就業者に対する著しい迷惑行為で、就業環境を害するもの」と定義。あらゆる場でのカスハラを禁じる一方、違反した場合の罰則は設けない。  事業者には、従業員らの安全確保を努力義務とした。顧客には「就業者に対する言動に必要な注意を払うよう努める」との責務を課した。  本来、正当なクレームは業務の改善やサービス向上につながるという考えに基づき、顧客側の権利を不当に侵害しないよう留意するとの規定も設ける。

◆8月19日までパブコメを募集

 都は同日、条例の基本的な考え方に関するパブリックコメント(意見募集)を始めた。8月19日までインターネットと郵送で受け付ける。  具体的なカスハラの内容や事業者に求める取り組みなどは、都が今後まとめる指針(ガイドライン)で示す方針。  カスハラを巡っては、従業員が休職や離職に追い込まれるケースもあり、連合東京が防止条例の制定を都に要望していた。都は昨年10月、有識者による検討部会を設置。今年2月、小池知事が条例制定の方針を表明していた。(三宅千智)


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