6選を目指す現職に新人4人が挑み、激戦となった東京都目黒区長選が21日投開票される。駅前などでの街頭演説は熱を帯び、実はここは目黒区じゃない―なんて事態も起きている。

東急大岡山駅(大田区)前で演説する目黒区長選の候補者

17日夜。東急目黒線と大井町線が交わる大岡山駅の前で候補者がマイクを握っていた。若い男性連れが「ここ、目黒区だっけ?」と顔を見合わせる。  ここは大田区。だが、30メートルも歩けば目黒区になる。先には住宅街が広がり、目黒区民の駅利用は多い。その一人である会社役員の男性(58)は「いろんな人がこの辺りで演説していますよ」。大岡山は目黒区の地名。1丁目と2丁目がある。 14日の告示日は、2陣営が区境付近にある品川区の駅前で街頭活動をした。一人は「東京で最も長い」アーケード商店街が名所の東急武蔵小山駅前、もう一人はJR目黒駅前。「目黒駅は目黒にはない」のだ。  区選管によると、公職選挙法に選挙区外での選挙活動を規制する規定はない。この日、ある候補者は「ここは品川区」と演説のつかみに使い、聴衆の笑いをとっていた。「目黒は近隣区と比べてもさまざまな施策が遅れている。品川区ではこうして、既に新しい街づくりが始まっている」と、「選挙区ではない」ことを逆手にとった主張を展開していた。   ◇  ◇

◆現職区政への評価が争点

目黒区長選に立候補した(左から)伊藤悠さん、青木英二さん、河野陽子さん、滝下隆行さん、西崎翔さん=届け出順

 目黒区長選には、いずれも無所属で、元都議の新人伊藤悠さん(47)=国民民主、都民ファーストの会推薦、現職の青木英二さん(69)、元区議の新人河野陽子さん(61)=自民推薦、IT企業社員の新人滝下隆行さん(41)、元都議の新人西崎翔(つばさ)さん(40)=立憲民主推薦、共産、社民支持=が立候補。過去最多の5人の争いとなっている。 5期20年に及んだ現職区政への評価が争点。知名度の高い政治家が続々と応援に入っている。小池百合子都知事は、自らが特別顧問を務める都民ファーストの会の活動に連動して、集会などに顔を出し、河野太郎デジタル相は自民推薦候補と街頭演説をした。立民の蓮舫参院議員も元秘書だった党推薦候補の支持を訴えて回った。  目黒区長選の過去5回の平均投票率は29%。激戦で投票率がアップする可能性もあるが、票が分散してどの候補者も法定得票数(有効投票総数の4分の1)に届かず「再選挙になるかもしれない」と心配する声も関係者の間ではささやかれている。(中村真暁)

 目黒区 1932年に当時の東京市が15区から35区に拡大された際、新設された区の一つ。戦後、23区になっても区域は変わっていない。都の2022年1月時点の統計では人口約28万人(23区で15位)、面積約15平方キロメートル(同16位)。人口は増加傾向で、区推計では50年に約31万人でピークを迎える。江戸時代は将軍のタカ狩り場があり、古典落語「目黒のさんま」の舞台になった。区役所の最寄りは東急・東京メトロ中目黒駅。



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