7割近くの有識者が、台湾海峡と南シナ海で軍事紛争や衝突が起きるとみている――。NPO法人「言論NPO」が日本の有識者を対象に実施したアンケートで、こんな結果が出た。中国とフィリピンの対立が先鋭化していることから、今回は南シナ海が「危険」と答えた人が大幅に増えた。
調査は6月末~7月上旬に実施。学者や企業幹部、公務員、メディア関係者ら388人から回答を得た。それによれば、50%が北東アジアで紛争や衝突が起こりえる切迫した状況だと答えた。この傾向は、例年大きな変化はみられないという。
一方、最も危険な地域(単数回答)は「台湾海峡」が40.5%。「南シナ海」が昨年の6.3%から26.3%に急増した。「朝鮮半島」は21.1%だった。
紛争や衝突が起こる可能性は、「数年内」「将来的に」をあわせ台湾海峡は67.5%。南シナ海は66.8%で、約4人に1人が「数年内」と答えた。フィリピンから近い南シナ海の岩礁をめぐり、中国の海警船がフィリピン船に放水砲を発射し、船同士が衝突する事態が起きるなど、緊張が高まっていることが影響しているとみられる。
朝鮮半島で紛争や衝突が起こる可能性は、「数年内」「将来的に」をあわせ62.1%、尖閣諸島周辺は43.3%だった。
調査では、2024年の北東アジアで特に懸念していることも尋ねた(複数回答)。最も多かったのは「台湾海峡における偶発的な事故」(40.7%)だった。また、核兵器保有を宣言する北朝鮮がミサイル発射を繰り返していることや、ロシアと北朝鮮が軍事協力を進めていることにも懸念が集まった。
言論NPOの工藤泰志代表は「上位10項目のうち四つが朝鮮半島のリスクに関することだったのが特徴的だ」という。
紛争を回避し、平和を実現するために取り組むべきことは、「日中、米中などの大国関係の安定」(44.8%)が最多だった。工藤氏は「米国は中国と対立しながら対話もしている。日中の対話不足は明確だ。有識者は日中の対話を求めていることが調査からうかがえる」と話した。(編集委員・奥寺淳)
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